そして今現在。
 
 魔王の城にはあれ以来勇者は現れていない。一応巷ではいるという噂ではあるのだが。
そしてここまでに空席になってしまっていた四天王の一席も既に埋まっていた。
「既に人間の土地を38%治めました。魔王様と師匠様の食料調達には、
この近辺の町を使えば楽でしょう。」
淡々と地図を並べ、言う者の名はキル=アサシ=ファザーン。
本名をノーブリー=フィーンドゥ=キル。
額にうっすらと角が見えるキルは今年で40歳。
暗殺・諜報・策士を務める2軍を率いる最年少の四天王だが、
赤黒い髪をし黒くぴったりとした和服まがいの服を身にまとう姿は少年だ。
 
 腰には策士らしからぬ剣を見につけており、書類をロードクロサイトへと渡す。
会議と言うか朝食が終えると彼は朝の稽古のため、ローズの元へといった。
「師匠様、手合わせお願いいたします。」
「食後の運動ね。そういうことなので魔王様ぁv午後にお伺いしますvvvv」
 短く返事をするロードクロサイトに手を振ると弟子を引き連れて退室した。
「師匠、其の口調…キモイ。」
「そぉ?」
「元勇者だろ。」
「まぁねぇv」
「師匠じゃなかったらいっぺん生まれ変わって来い。」
「それでさらに魔王様とvv」
「うざい。キモイ。腹掻っ切れ。」
「いやぁんwそんな事言わないでぇww」
 弟子であるはずのキルに暴言を言われ、怒るかと思いきや、ものすごく嬉しそうだ。
 
 
(今頃表れたと聞く勇者は…何をしているのだ?)
 ここ最近彼はずっとそれを考えてきた。
彼としては強いものと戦いたい。
というか本気で自分を倒してくれるものがいないかヤキモキしていた。
別に死にたいわけじゃあない。
ただ、四六時中事務仕事をするのはいい加減飽きたのだ。
早く自由の身になりたい…それが切実な願いだ。
まぁあくまでも本気が出せなければ意味がないらしいが…。
(こうなったら…私の手で自ら勇者たちを強く…。あ、案外良いかもしれない。よし。そうしよう。)
 天然な魔王は史上初の試みを考えてすぐに決行する事に決めた。