勇者御一行

 
 
「本気ですの?ロードクロサイト様。」
「本気ですか?魔王様。」
「ちゅうっちちちちゅう?」
「何ゆえですか?」
 四天王であるフローラ・ローズ・キスケ・キルはそれぞれ当たり前の反応をした。
その反応に当の本人はふてくされたように手に持っていたグラスを回す。
「確かに勇者は最近ダメダメですけど…。一応敵なんですから。」
「全力を出して戦いたいのなら僕と手合わせしていただければ…。」
 大きくため息をつくフローラと身を乗り出すローズ。
「ちなみに僕が勝ったとしたら犯s…。」
「黙れこの変態。」
 嬉々として提案したローズの言葉を殺気立った様子でキルが鋭く遮る。
「…ローズ、多分…まだ私の本気には届かんだろうけど…なにが望みだったんだ?」
「気にしなくてもいいですわ。このド変態が戯言を言ったまでです。」
 その言葉の意味を察したフローラは冷たくローズを見やる。
 
 言われた本人は一瞬目を輝かせたが、傍に居るキルの殺気に小さな咳払いをする。
「まっまっまっまっまあそれはさておき…。本気で…勇者を強く?」
「あぁ。実際は今の戦力がどれだけのものかこの目で見てみたいのだ。」
 妙に口ごもるローズに首を傾げるが、空色の髪を揺らし答えた。
天然なのか本気でこの場の空気を読み取っていないのか激しく微妙だが、
四天王はそろって渋い顔をした。
「まぁロードクロサイト様…止めようとも勝手に行く貴方様ですから止めませんが…
誰か連れて行ってください。そうですね…大変不本意ですが、ローズあたりを…。」
 嫌な顔をしてフローラはローズを見る。
見られた本人も嫌な顔をしたが複雑な顔をしている。
どうやら一人ロードクロサイトと同行できるのに心躍らせているらしい。
 
 
「いや…一人で行こうと思って。4人とも仕事があるだろ?なら手間をかけさせるわけには。」
「わかりました。そこまで言うならば…。とりあえず死なない程度にお願いいたします。」
かなり落ち込んだ様子のローズの隣でフローラは深いため息をついた。
たまに使い魔を通して連絡を取り合えば良いということで話は終わり、
翌日、ロードクロサイトは勇者がいるという情報を元に町へと下りていった。