「私はネティベル=オウリアンダー。白魔導師をやっているわ。
これは私の弟子の黒魔導師、ポリッター=ジュリー。
ま、その辺の雑務らせりゃそれで良いから。あぁ、一応私の許可は得てね。」
先ほどの女性はそう名乗ると傍らでにっこりと笑う少年を小突きながら紹介した。
ふと、突然ロードクロサイトの目の前が何か巨体に塞がれる。
「あたしはキャシー=ビルゴ!。16歳になったばかりなの!
弓が得意だからスナイパーをしてるの!」
聞こえるのはかなり高い少女の声。
見上げた巨体はピッチピチの服を着、
浅黒い肌は今にもはりち切れんばかりに筋肉が盛り上がっている。
何より表情は目元が深く、影になっていて全く見えない。
…一応少女のようだがその姿からは到底わからない。
次に聞こえてきたのはいかにも声から馬鹿がわかるほどの軽い声。
「うちはアイアン=クレイジン。どんなきょくでもおどれるお・ど・り・こvv
んでこっちはうちのあいぼーのぎんゆーしじんジミー=メイデン。
まさにせいしきょうどうたいなのw」
運命共同体じゃないのか!そう突っ込みたいところだが、
その踊り子とその背後にいる吟遊詩人を見た瞬間固まってしまった。
女性は20前半。なによりも頭には奇妙な飾り。
そしていたるところに毒々しい髑髏のアクセサリー。
露出度は高いのだがアクセサリーが怪しすぎる。
吟遊詩人の青年…いや少年か?彼は顔半分以上を帽子で隠しており、
なにやらぶつぶつと喋っている。
そして背にはウクレレを担ぎどこかおかしないでたち。
歌を歌えるのかどうか…
わからない。
「お初にお目にかかりますご主人様。わたしの名前はジュリアン=ドンポスと申します。
格闘家をやらせていただいておりますがどうぞよろしくお願いいたします。」
やけに丁寧な挨拶をするのは白と黒のレースをふんだんに使ったエプロンの女性。
頭にはヘアバントをつけ、ブリブリと言う表現があって居るようなエプロンと、
その他もろもろ…その服装にもはや突っ込む事もない。
ふと、いつの間に背後にいたのやらものすごい殺気を感じ、
ロードクロサイトは恐る恐る振り向く。
其処にはつばつき帽子を目深に被った性別不明のものがいた。
「エリー。そう呼べ。」
彼(彼女?) はそういうと嫌な笑いを残し手近の椅子に座る。
「あっあっのう…おっおいら、ウッド=ウェハースといいます…。
けっ剣士をやらせて頂いております…はい。」
「!?」
おずおずと出てきたのは魔界人の男性。やつれた表情にくたびれて継ぎはぎだらけの服。
そして赤黒い髪が頭に巻いた手ぬぐいからはみ出していた。
その色に覚えがあるような気がするロードクロサイトだが、
まさか自分の軍にそんなのがいたような記憶がない。
一応策士としてローズの弟子である少年四天王の顔が浮ぶがありえない。
魔界人は先に苗字を名乗る。そのためあえて名前から先に言ったロードクロサイトだったが、ウエハースと言う名の男性はロードクロサイトをまじまじと見つめた。
「どこかでお会い…。」
「ちょいとすまんのう。どうしたんじゃ?」
ウエハースを押しのけて現れたのは鎧に身を包んだ老人だ。
プルプルと震えながら前に進みでる。
「わっわしは…パシ=キホーテ。元騎士団長じゃ…。
一度だけ勇者どのとまっ魔王城に行った事が…。」
そういわれずいぶんと前の記憶を辿る。人間の寿命から考えて多分最後に来た勇者の…。
(あ、あの逃げた奴。)
そういえばこの顔…見覚えがなくもない。
また勇者一向に加わっているのかと呆れるが、表情には出さない。
「ところで…勇者は…?」
「だれ?エルフ?なにそれ。食べものある?」
奥から出てきた少年に一瞬石化する。
突き出た腹。丸い顔。にごって光のない目。
本当に勇者なのかどうか疑わしい。
唯一つ確実なことがある。
ロードクロサイトの大嫌いなでぶ・バカ・汚いの3拍子が揃った一瞬にして灰にしたい部類の物だ。
「弟…いや勇者の印を天から頂いたベルフェゴです。
新しく同行してくれるロードクロサイトさんだよ。」
「ふ〜ん。ねぇ、フードのした何?」
「あぁ、すみません。」(黙れこのデブ)
フードを落とすと現れた赤い瞳と空色の髪に物珍しげにジロジロと見られる。
「うわ〜エルフって本当に耳が長い…。駄目なおっさんも長いけどクロさんの方が立派な耳だね。」
「色白いわね…。何使ってんの?」
目を輝かせるポリッターとしげしげとロードクロサイトを見てほぼ睨むように聞くネティベル。
「もっ森で暮らしていたため…日光に弱くて…。だから長時間日光の下にいられないんですよ。」
もうエルフだって何だってどうでも良いといわんばかりにでっち上げをする。
ついでに日光に弱いと言うことも何とか誤魔化せたのでほっと胸をなでおろした。
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