「ところで兄ちゃん、あれなに?」
好奇心の目を向けられていて正直困っているロードクロサイトに伸びた救いの手は、
意外にもあのデ…いやベルフェゴだった。
つられて全員が窓辺に目を移す。
(ロッローズ!?)
窓枠に隠れているが風に揺れ見え隠れする赤いバンダナ…。
ここ数十年見てきたその色にロードクロサイトは頭を抱えてしまった。
低く呟くように呪文を唱え、わずかに動かした指からはなった。
チャーリーが丁度何なのか剣を抜きながら近寄っていた脇をすり抜け、
呪文によりバンダナは一瞬で消える。
「いや〜〜〜んv」
小さく悲鳴が聞こえたがかまっている場合ではない。
「あれ?消えましたね…。変な叫びも…。」
窓の下には誰もいない。
首を傾げるもまぁ良いかと窓を閉めた。
「ところで…パシおじさん。勇者に同行してたって初めて聞きましたよ?」
チャーリーのひところに皆そういえばと言い出す。
(こっこいつらは…馬鹿か!)
いろいろな意味で焦る彼だが、パシはしばらく考えた後に口を開く。
「あぁ、あの時はのう。大変じゃった。あともう少しだったんじゃが…
爆風の後のことは覚えていないのじゃ。」
(嘘つけ!逃げただろ!おぉいじいさん)
「それでぇ、まおうってどんなの?」
「髪の長い青い髪の…」
思わず身を強張らせる。
「お嬢さんじゃった。」
「あら、お嬢様なのでございますか。」
「あらロードクロサイト、貧血?」
「いっいえ…ネティベルさん。」
(よりによって…よりによってえぇぇぇぇ)
既に心の奥底で涙を流す彼に不審げな目を向けるネティベル。
精一杯怪しまれないよう振舞うが、キャシーの高い声やなにやらで、
魔王=女性というのが決まってしまったようでがっくりと肩を落とす。
今後の事も考えればまぁいいカモフラージュだと何とか納得しようとするが、
それでもやはり腑に落ちない。
やっと騒がしい一行は眠りに付くということで、彼は荷物が残っているという名目、
別の宿へと向かう。
明日町を発つらしい。
人間の生活リズムに合わせるため、3日間眠らずにいたロードクロサイトは朝早く起きるためにいつもなら起きている時間の夜、眠りについた。
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