「チャーリー君の持つ剣は一応光属性だからそれでやってみようか。
 僕がかく乱するから攻撃してって。」
 いいね、というと返事も聞かず飛び出していく。
ただし剣は鞘に収まったままだ。
不審に思うチャーリーだったが、すぐに刀を構え、気を溜める。
「祖父ソーズマン直伝。光速剣 光鎌鼬」
 光の刃が一瞬のうちにサイクロプスに当たると瞬き、消える。
その光にサイクロプスはもがき苦しむと攻撃の矛先とチャーリーへと向けかけた。
すぐにローズにさえぎられ再びローズへと攻撃を向ける。
だがいつまでも気を使っては決定打が出来ないと判断し、
光を剣にまとわせ直接切りかかりに行った。
「へぇ、至近距離戦もできるようになったんだ。」
 すれ違いざまに言われるがチャーリーは意識を乱すことなく、
軽く頷き右から来る攻撃を跳躍して避け、
飛んできた棍棒を蹴ると一気にサイクロプスの目玉めがけ剣を振るった。
 
 だがそうすぐ上手くいくはずもなく、わずらわしそうに動かした左手に弾き飛ばされる。
ローズが間に入り左手を弾き飛ばしたが、掠めたチャーリーはとっさに刀で防御し、
吹き飛ばされてしまった。
すぐに体勢を立て直したチャーリーは刀に違和感を感じ、見下ろすと目を見開いた。
 とっさにかかげたひびの入った刀に更に衝撃がのしかかる。
サイクロプスの拳を切りつけたチャーリーだったが、澄んだ音に愕然とした。
途中から折れた刀は微かに感じられた神々しい力はない。
 あたりが結界に包まれたことにも気がつかず、
チャーリーは呆然と折れた伝説の刀に気を取られていた。
「あのねぇ。混ぜ物入っている神器じゃあ折れるに決まってるでしょ。
 しかたないか…。チャーリー君、内緒だよ。」
 笑うローズに現実に引き戻され、チャーリーははっと驚く。
 
 
 ローズが腰から抜いた剣は初めなかった光を放っていた。
剣をかかげると柄の蒼い宝石が光り輝く。
「目を覚ませ。エクスカリバー。」
 その言葉に呼応するかのように一層輝きが増す。
本来の力を出すエクスカリバーを右手で構えると左手に魔力を集中させる。
「グァンファ(光華)」
 白く美しい光があふれサイクロプスを貫く。
すぐさま穴はふさがれ、サイクロプスはローズを燃えるような視線でにらみつける。
「暗雲を割りて、天より降り注ぐ光よ。闇夜を貫き地を照らせ。
 チィアンコウグァイ(天空光)」
 光魔法の最上級魔法を唱えると眩い光がサイクロプスに幾つも突き刺さった。
ひるんだところに飛び込み剣を凪ぐ。
サイクロプスもたださされているだけではなかった。
棍棒をめちゃくちゃに振り回し、血の代わりに黒い霧を吐き出す。
高々と舞うサイクロプスは隻腕となった痛みでこの世のものとは思えない咆哮を響かせた。
「さすがに…60%も回復してないときに中級の後すぐ最上級はさすがにきつかったか…。
 あ〜魔力足りなくて頭くらくらするし。全然威力足りてないし…最悪。」
 すぐさま戻ってきたローズは剣を地に突き肩で息をする。
地面にはポタポタと赤いしずくが落ち、地に朱のバラを咲かせていた。
「いっ今回復を…。」
「大丈夫。これでも常時回復でこれ以上上乗せできないんだよ。
 剣も呪文も無理なら少し離れたところで見るだけでいいから
 僕の動きを目で追っていてくれるかな。」
 目にかかる血を拭うと若干荒い息で危ないからという。
呪文の威力も見るからに桁違いなローズの言葉にチャーリーは頷きかけるが、
ローズの様子に自分も何か出来ないかと足を踏み出す。
だがすでにローズは銀色の髪を翻し正気を取り戻したサイクロプスに駆け寄っていた。
 必死に目で追い何か自分に出来るとことはと、
考えるが徐々にローズの動きに思考を奪われる。
強い。
それもレベルばかり上がっていた自分より断然強くそして早い。
だが60%回復という言葉に負傷しているのかと、
だがそれと見えないほどの動きにただチャーリーは驚いていた。
 
 
 だがすぐにはじかれる音がし、ローズが地面にたたきつけられる。
そのまま振り下ろされる腕を反動をつけ飛びのくとチャーリーから少しはなれる。
「やっぱ手抜きじゃきついか…。本気だしたくないんだけどなぁ。」
 そうつぶやく声が聞こえ、チャーリーは再び驚いた。本気ではなかったのかと。
だがそれを口に出したのはサイクロプスであった。
「「お前はこの闇と本気でなく戦うと。匂うぞ闇のにおいが。
 さぞ貴様の血筋も闇に満ちた愚弄な一族なのだろうなぁ。愚かな愚かな。」」
 反響する声にチャーリーは言葉の意味が半数しか聞き取れない。
笑い続けるサイクロプスだが突然妙な重力がかかりチャーリーは抵抗も出来ず地面に押さえつけられる。
「愚弄?そう僕は地に落ちた外道だ。でも血筋は関係ない。
 僕の家族を愚弄するやつは…ユーを愚弄するやつは許さない。」