目を覚ますと真っ先にロードクロサイトにはたかれ、ローズは慌てて飛び起きる。
瞬間痛む腕に顔をしかめるが、跪き深々と頭を下げロードクロサイトの言葉を待った。
「まったく…まぁ先ほどの闇は予想外の出来事とも言えるが、
ダメージと頭に血が上っての暴走は以前のキルよりも酷いぞ。」
「申し訳ございません。思った以上に体の調子が戻っていませんでした。
しかし、暴走したのはそんなことを予想していなかった自分に非があります。
どんな罰もお受けいたします。」
跪くローズに本来ならば罰を与えたいロードクロサイトだが、
手足だけでなく頭や胸に巻かれた包帯に無理をさせるのがためらわれる。
元々ウェハースの起こした事件の怪我が原因で弱体化していたローズの力が更に弱まってしまっている。
「それは城についてから考える。そういえばチャーリーの剣が折れたそうだが…
直るのか?」
このことはもう少し回復を待ってからにしようというと、
チャーリーの折れた剣のことを持ち出した。
おずおずと顔を上げたローズはよろよろと立ち上がり、
ベッドに腰掛けるとエクスカリバーを取り出し、出来ますと頷く。
「幸い、これともともとの素材が同じなのでエクスカリバーの力も使えば出来るはずです。」
そこまでいうとローズは軽く鞘越しにエクスカリバーを撫でた。
ならよかったというロードクロサイトにただ、と続ける。
「チャーリーの力…持ち主の力も必要なので協力が必要です。
同様に僕の力も必要不可欠でしょう。できれば…二人っきりで直したいのですが…。」
「それはその方法について聞いてから考える。それに興味あるというのもあるが、
その紋を使う場合は何がおきるかわからないからな。何か危険なわけじゃないだろうが。」
無意識のうちに紋章に触れるローズにロードクロサイトは言うと、ですよね、
とため息を吐いた。
「危険ではないです。すぐ終わると思いますけど…。
直すためには少し特殊な呪文を使うんですよ。剣を元の神器に戻さなくてはならないので。
あまりその呪文を使っている間はロードクロサイト様には見られたくないんです…。」
ただの僕のわがままですけど、と苦笑すると、でも別にいいですよと言い立ち上がる。
「休んでからでなくて平気ですか?顔色あまりよくないというか、白いですけど。」
「本当は寝ていたいんだけど、あれ直してから寝たほうが自己修復で早く直るでしょうし。
終わったら移動する以外では起こさないでくださいよ。血は勝手に飲んでいいので。
代わりに魔力をわけていただければ…。」
やや心配げなキルに言われ、ローズは頭をかきかけ包帯に手を止める。
「チャーリー君、ちょっと刀を見せてもらってもいいかな?」
一行が休憩している部屋に行くと真っ先にローズが呼び出し、
回復魔法を唱えていたネティベルまでもが振り向いた。
戻って早々治療しようとしたのをロードクロサイトらが断り、
アーチャーとプリーストが手当てしたのでどこまでひどいのかはわからない。
プリーストも魔物がいない間に帰ろうとしていたため、
治療後は天界へと帰ってしまい詳細は聞けなかった。
ほとんど傷を負っていなかったチャーリーは折れた刀をローズの元へと持ってくると包帯を心配げに見る。
鞘から刀を抜いたローズだが折れた刀身と柄を見比べ頷いた。
「これ、僕なら直せるけどちょっとチャーリー君の力が必要なんだ。
だからちょっとこっちの部屋来て。」
刀を納め、鞘を持つとチャーリーを部屋へ来て欲しいという。
だが、ネティベルはちょっと待ちなさいと呼び止める。
「あのとき何があったのかわからないけど、信用できるのかしら?本当に直せるの?」
「うん。信用するしないは僕が人を一部以外信じていないからどうでもいいけど、
直せるのは事実だよ。まぁ昔別の剣をへし折っちゃった時は直せなかったけど…
この刀だけは特殊だからできるんだ。
それはそこにいるアーチャーとファイターが保障してくれるはずだよ。」
ね、と部屋にいる2人に確認を取るとネティベルを見つめ頷く。
「あぁ、じゃあファイターかアーチャー。保証人に付き合ってよ。それなら文句ないだろ?」
「ネティベルさん、大丈夫ですよ。ローズさんは…信用できる人ですから。」
チャーリーの言葉にローズは目をしばたかせると困ったなぁと苦笑する。
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