結局ファイターがついていくことになり、部屋に戻るとキルは居らず、
ロードクロサイトだけが待っていた。
 部屋の中央に座らせると折れた刀と鞘を並べ、そこにエクスカリバーを並べる。
「我に宿りし神の紋。汝に眠りし原点の力を一時我に与えたまえ。
                  ――――(神化光来)――(創造主)」
 聴きなれない言葉に、それでもチャーリーはその意味がなぜかわかった。
瞬く間にローズが光に覆われ、銀色の髪が足元に扇状に広がる。
服装も旅人の服ではなく、見慣れない白い布を巻きつけ背には一対の抽象的な形をした光り輝く翼のようなものが現れた。瞳の色までもが琥珀色になるとチャーリーに手を差し伸べる。
「――――。―――。(君の手を差し出して。刀に触れて。)」
 口を動かさず聞こえる声はやはりチャーリーにしか聞き取れない。
言われるがままに刀に触れると折れた口から光があふれる。
刀身と柄を合わせるとローズはエクスカリバーを手に取り自らの腕を切りつけた。
赤いしずくを折れた口に垂らすとその上に濡れたエクスカリバーを乗せ、
柄の宝石を一撫でする。
 エクスカリバーの青白い宝石から光があふれると答えるかのように天の正虎の柄の内部が光り輝いた。
 
 透けて見えるのは青い水晶。
 
 鼓動するかのように瞬き、つられる様にして紋からあふれるチャーリーの光をすい始める。
やがて天の正虎は光そのものになるとローズの身体へと吸い込まれてしまった。
それを左胸に手を当て、光を掴むとゆっくりと引き出していく。
現れたのは傷ひとつない天の正虎だ。
抜けきると鞘へと納める。鞘も光になると刀を包み込み、姿を変化させた。
エクスカリバーを納める頃にはローズを覆う光は消えかけ元の姿へと戻っていった。
その場に崩れ落ちるローズをロードクロサイトが受け止めるとそのままベッドに横たえる。
寝息が聞こえ、宣言どおり熟睡しているようだ。
肩から魔力を与えつつロードクロサイトは念話を飛ばしキルに終わったことを告げた。
 
 
 すぐさま開いていた窓から中へと滑り込んだキルは窓辺に座っていたファイターを踏みつけ謝る。
「それで…なにしているんでしょうか?刀を見つめたまま固まっていますけど。」
 キルの指摘にファイターもロードクロサイトらの見る先を見る。
抜き身の刀を見つめるさまは魔王城ではロードクロサイトが武器の手入れが終わった後などによく見る光景だが、人間の世界じゃまずおかしいだろうと3人そろって心の中で突っ込む。
ふと、気配を感じ窓の外を見ると一軍の下っ端が集まっているのが見えてきた。
 
「チャーリー君、刀を見ているのもいいけど魔獣がまた集まってきたようだ。
 今回はサポートできないが…。」
 ロードクロサイトの言葉にようやく顔を上げると窓を見つめそうですね、と頷く。
「大丈夫です。昨日まであちこち痛かったですけど、
 ローズさんばかりこんな怪我させてしまって…。
 4日前と違ってもっと上手く戦えると思いますし、前回得た経験で戦いたいですから。
 それに…。」
 何かを言いかけ、首を振るともし目を覚ましたらお礼を伝えてくださいと言い残し、
仲間を呼びに走り去ってしまった。