「会話が聞こえなかったのが痛いが、キレた際に妹の名を言ってしまったかもしれないな…。
 まったく。にしてもずいぶん魔力を吸うな…。
 しかし…どうなったのか見たいが移動するのも面倒だな…。」
 ある程度魔力を与えるとスバルナを呼ぶかとも考えるが、
今は城に戻っているためそう早くはこられない。
考えるロードクロサイトにキルはため息を吐く。
「今は周りに人間がいないので魔王様と呼ばせていただきますが、
 使い魔を飛ばせば見られるのではないでしょうか?」
 今更な提案ですが、と心の中でつぶやくとその手があったのかと手を打つ魔王を見る。
着ているローブをはらうと無数の蝙蝠が飛び出し、開け放たれた窓から出て行った。
部屋に残った数十匹がその場で円を描くと黒い渦が生まれ、戦闘の様子を映し出しす。
 
 
 蝙蝠に気がついたのか、桃色の毛並みをした犬が振り向き、念話を送る。
【魔王様、ファザーン様お久しぶりです。勇者とはどれですか?それとジキタリス様は…】
 飛んできた流れ弾を軽やかに避けると勇者一行を見て問う。
他軍で通る名で呼ばれたキルはちらりとローズを見ると念話を返す。
【1軍副将のハナモモですか。勇者は茶色の髪をした細身の少年です。
 今サラマンダーを切ったのがそうですね。師匠なら今怪我で寝ています。
 思った以上に疲れていたそうで】
【怪我ですか!?誰ですか!ジキタリス様に怪我を負わせたやつは!!!
 ムファスカーの指揮していたやつですか!?】
 熟睡しているが無事だと、言おうとするとハナモモの念話にさえぎられ
2人はキーンと響く声に頭を抱える。
だが向こうからは見えないため一人…
一匹で一人ごちるととりあえずムファスカーに矛先が向いたようだ。
【まぁそれもあったが…一番は突然やってきた闇の集合体だな。
 勇者の魔法がそこまで強くないということでローズが代わりに戦ったんだが】
【魔王様、ちょっと灸すえて来ます。】
 魔王の念話をさえぎるとハナモモは蝙蝠から離れ、姿を変化させる。二足歩行で軍服を着た犬人の姿になると剣を取り出しあっという間にチャーリーの元へと駆け寄った。
「本当に一軍の連中は人の話を最後まで聞かないな…。」
「ハナモモって…。一軍の魔剣士さえもしのぐ剣豪じゃないですか…。
 まったく何やっているんだか。」