「旅の時はいつもこうだったのか?」
ベッドを2人に占領され隅のほうで丸まっているローズになんだかな、
とロードクロサイトは言う。
それに対し、二人はそろってないという。
「まぁそういう時も多々あったけど、基本的には保護者の目がきつかったからな。」
「そうそう。プリーストもまぁローズのこと好きだったからだと思うけど…
一番すごかったのはお兄さんかねぇ。」
あいつの過保護っぷりには笑えたもんなと思い出し笑いをする2人に、
キルとロードクロサイトは首をかしげた。
「ローズは2人兄妹じゃなかったか?」
「あ〜違う違う。別に血はつながってないけど、
ただソーズマンにとってローズは手のかかる弟だったみたいで…。兄貴分っていうの?
よくわかんないけど、ことあるごとにローズの面倒見てたんだ。
大体はいつも一緒に行動してたかな?」
アーチャーの言葉にそういうことかとロードクロサイトは納得した。
そもそも歳も一歳とはいえソーズマンのほうが上だ。
背格好も歳相応かすこし上に見えるほどしっかりとしていた。
反対にローズは今とは少し違い、人に対する警戒心をまるで持っていなかったためと、
あまり村から出たことがなかったということで世間知らずな一面があったのだ。
背が低く体が細いため、また声が若干高いと髪が長いので、
良く少年やら中性的な女性と間違えられ、必ず年下と見られていた。
遭遇するたびによくそういう場面に出くわしていたため、
一緒に旅をしていたわけじゃないロードクロサイトにも良くわかっていることだ。
おまけに魔法とすばやさに特化しているがその反面、力が弱いのと体力が低い。
相手の攻撃を利用しての反撃や呪文速度と威力、
また攻撃を受け流しつつの攻撃などには手合わせの最中ロードクロサイトですら梃子摺るほどだ。
だが、一度武器を合わせての力比べとなると音を上げるか、
力を分散させようと周辺にすばやく目配りをしている。
体重をかけ全力で当たれば剣を両手で押さえ膝を着くこともあり、
そのまま転ぶことも手合わせ中では日常茶飯事の事。
「でも師匠の妹さんと婚姻を結んだんですよね?
じゃあ事実上ソーズマンという人は義弟じゃないんですか?」
キルの言葉に以前手合わせ中に本気で斬りかかってしまい、
ローズに大怪我を負わせたことを思い出していたロードクロサイトは現実に戻る。
そのときはうっかり勇者の紋を斬りつけてしまったために丸一ヶ月、
ローズが戦闘不能になり、フローラからは怒られ当時いたホースディールには呆れられ、
3軍四天王の代理を補っていたシャムリンという、現在ローズの屋敷の家政婦長を務めている猫又に怒られ…ケアロスらには完治するまで治癒の間に魔王様といえども入れさせません、
といわれ血が飲めず…散々な一ヶ月をおくったのだった。
自業自得ではあるが…。
「そういえば…でもあいつのことだからローズは一生弟分で嫌味以外では義兄とは見ないだろうさ。」
そういえば最近よくローズが出かけ、キルの家に行っていると聞いたことが多々あったな、
と思い出し屋敷の近くにシヴァルがいたことも見た覚えがある。
師弟関係の息子のことで何か相談でもあるのかと、ロードクロサイトは思った。
「で、ロードクロサイト様。人の話し聞いていましたか?」
「いやまったく。兄がどうとかという話なら。」
上の空で会話を聞いていたロードクロサイトにキルがたずねると、
ロードクロサイトは首を横にふった。
「その後の話ですよ。4日後にこの町を出るそうなので、
見たいものか何かあれば一緒に行きませんかと…。」
そうだな…しかしあの見世物も今回の魔物騒ぎで隣町に行ってしまったらしいからな…。
一応ローズの魔力のこともある。明日は宿に残っていよう。」
その後はまだ考えなくてもいだろうという、というと夕食の時間になり4人はローズを置いたまま
階下へと降りていった。
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