「そんなに昔ですか?あまり人間の世界に目を向けていませんでしたからね…
 ほとんど泉で暮らしてましたし。魔王様の生まれる前といいましても、
 私がまだ子供のときですから…。たかが4・500年前の話ですよ。」
 さらりというセイにそういえば50年ほど前までは泉でひっそりと暮らしていたことを思い出す。
暴れていた彼女をなだめ、怪我の手当てをした時以来、
彼女は一軍に入り恩人であるローズに恩返ししていたのだった。
ほとんど1人で暮らしていたので時間の感覚は通常とは違ってもやはりロードクロサイトは呆れざるを得ない。
「まぁ…いい。面白いと言うよりも強い敵を戦いたいからな…。
 それで勇者一行を見ているわけだが最近では流されっぱなしでな…。
 あぁ、ローズ目が覚めたか。」
 ぼんやりと目を開けたローズに気が付き声をかけるとローズは起き上がりながら首を鳴らす。
 
 
「なんか…首が痛い…。ロードクロサイト様おは…あぁもう夜ですか。じゃあこんばんは。」
 まだどこか寝ぼけているローズは首をさするとすぐそばにいるセイ達に気がついた。
「あれ?セイ。どうして…。それにケアロスまで。」
 目をしばたかせるローズにセイはわずかに笑うとすぐに気を引き締めた。
「ハナモモが心配しておりました。おかげで軍内部はまとまりがつかず、
 ほとほと困っていたところです。いい加減丈夫になってください。」
「ハナモモが?来たの?後で念話しとくよ。
 そういえばセイは病気ないんだっけ…うらやましいなぁ。」
 セイに言われまいったなぁと頭をかく。
 
ふと手を止めまじまじと見ると首をかしげる。
「髪の毛切った?短くなったような…。」
「よく気がつきましたね。ほんの少し切っただけですけど…。変ですか?」
 結んだ髪を手に取り本当に毛先だけなんですけどと言うセイにローズは微笑む。
「そんなことないよ。似合ってるよ。」
「ほっ本当に毛先だけです。」
 若干顔を赤らめるセイだがローズはケアロスを見た。
「結構バッサリいったんだねケアロス。って…セイも髪切った」
 の?と言う言葉はセイの平手でかき消される。
そのままベッドに沈むローズに怒鳴るとケアロスを強引に引き、
ロードクロサイトとキルに退出の礼をとると再び渦を呼び出し城へと戻ってしまった。
「いったぁ…。なにも渾身の力をこめてたたかなくても…
 いったいどうしたっていうんだよもう…。」
 頬に見事な紅葉のあとをつけたローズはぶつぶつと呟くとため息をつくキルを見た。
「首をかしげているロードクロサイト様もですが、師匠鈍感すぎです。」
 いい年して何で分からないんですかと言うキルに2人は顔を見合わせた。
だがやはり首をかしげる。
「まったく…もう寝ます。あ、そうだ。あの天界人の人がこれをと。
 とりあえず飲んでおいてください。」
 アーチャーから渡された薬を渡すとローズは怪しむが飲んでおくかと口に含み飲み込む。
一瞬ものすごく苦そうに顔をしかめたが倒れるようにして横になり寝息が聞こえ始め、
ロードクロサイトらも眠りについた。