腕を吊り階段を下りるとすぐにチャーリーが気がつきおはようございますと挨拶をする。
「おはよう。そういえば天の正虎どう?自己修復機能回復した?」
「はい。先日も少し魔物と戦ったのですが、
桃色の毛並みをした獣人の一撃を受けてもほとんど刃こぼれせず、
それもすぐに直りました。
それに不思議なことに正虎から声が聞こえ、会話することも出来ました。」
本当にありがとうございましたと言うチャーリーに、
ローズは内心ハナモモかぁと呟くと顔に出さずにそれはよかったと頷く。
警戒していたネティベルだが何かまた考え事をしているのか食事すらも上の空だ。
エリーに叩かれはっとしたように意識を戻し降りてきた3人に挨拶をする。
「食事も取らずに考え事は効率的によくないな。
ネティベル、3食まともに取らなければわかることもわからないぞ。」
すでに食事を済ませたエリーに言われネティベルはため息を漏らした。
「わかっているわ。ポリッター、今日中に図書館にある魔道書に全部目を通して
3時間瞑想していなさい。」
食事を再開させたネティベルは目の前に座る弟子に口早に言うとエリーに声をかけ出かける。
キャシーは祖母の元へと行くと共に矢を調達に出かけてしまった。
ジュリアンはそのまま師匠となってしまったファイターに技の教えを乞いに行き、
アイアンとジミーは新しい歌の練習をする。ただしウクレレは弾かずにだ。
ベルフェゴはいつの間にかいないが食べ散らかした後がいつもより少ない。
「ローズさん、もし体調のほう差し支えなければ一緒に町まわりませんか?
詠唱破棄の呪文でまだ完璧に出来ない呪文があるので相談に乗ってもらいたいのですけど…。」
どうしようかなと果実をかじり考えていたローズにチャーリーが声をかけ、
ローズはどうしたものかとロードクロサイトを見る。
パワーアップにつながるのだがいいのだろうかと考えるロードクロサイトだが、
念話で許可を出しローズはチャーリーと町に出かけた。
「懐かれたな。キルはどうするんだ?」
「そうですね…あれはまた今度師匠と相談するとして…。
そうですね、ちょっと本屋行っていいですか?何か面白い本があればと思ったんですけど。」
予定ではアーチャーらに少し話を聞きたかったのだが、
孫やら即席の弟子やらと共に行ってしまったため予定がなくなってしまったキルは考える。
「本屋か?まぁいいが…ジャポネーゼ語だろうが。」
「普通に読めますよ。まぁ半分は師匠に教えていただいたんですけど…。
まさか読めないということじゃ…。」
宿を出つつ問うロードクロサイトにキルはなんでもないように答えるとまさかと魔王を仰ぎ見た。
「失敬な。一応ヒラカタというのは分かるぞ。」
むっとしたように言うロードクロサイトだがキルは脱力も呆れも通り越し大きくため息をはいた。
「ヒラガーナ、カタガーナです。失礼ですが400歳ですよね?
たびたびこちらに来ていたとファイターらが言っていましたが…。」
「そのときは別に読む必要がなかったからな。
地図などは城にあったのと結びつければ読めなくとも分かったから…。
人間の文字など読めなくてもいいだろうが。」
思わず半目になっていたキルにめんどくさいと答える400歳超えの魔王。
「大体ローズがいるなら全部任せればいいだろう。」
「今いません。だからセイがいろいろ嘆いていたんですね…。
体調を崩して休んでいるはずのジキタリス様に直接送られる書類やら何やらで、
十分お休みになられないと。そういってましたよ。」
ふてくされるように言う400歳にキルは以前、
ローズの部下であるセイの言葉を思い出す。
ふとそこへ小さな声の念話が2人に届いた。
【どうした?】
【も〜〜…どうしてこんなのが甥の子というか勇者としては僕の次の代なんですか…。
呪文も剣も14歳のときの僕のほうが断然良かったですよ。】
あ〜もうやだと呟く声がローズから届き2人は顔を見合わせた。
ひとまず現在どうなっているのか、直接行くためにロードクロサイトは蝙蝠を飛ばさせローズを探す。
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