「おろしてくんない?」
 チャーリーの実家…ローズの生家にと向かう道中、
目が覚めたローズはソーズマンの腕を叩く。
「うるさい。リンゴケース2個以下。」
「はい!?なんで…いや、あれは勢いよく置かれたからで…。っていうかなんで!?
 キルの…だから…ロードクロサイト様しか知らない話じゃないですか!!!」
 ソーズマンの腕から飛び降りようともがき、ユーチャリスに左腕を叩かれ撃沈する。
 家の玄関先でのやり取りに扉が開き、こげ茶色の髪の男が現れた。
チャーリーとベルフェゴに気がつくとにこやかに笑い、痛みに悶絶するローズをみるや軽くため息を吐く。
「おお!チャーリー、ベルフェゴ。と、そちらが仲間の皆さんか。
で…母さん、叔父さん痛がってますよ。」
「ごめんねお兄ちゃん。ローズ、皆さん疲れているから中にね。それと…」
「父さんが嬉しそうに出たのでもしやと思い、
 怪我の手当てと湯浴みの準備しておきましたよ。」
 中にと促され、ユーチャリスが先に入りソーズマンが後に続こうと足を踏み出す。
「お父さんまで…どういうことなんですか!!!」
 チャーリーの叫びにも似た声に3人は振り向いた。
その言葉に含まれる感情に気がついたロードクロサイトは興味深げにチャーリーを見る。
「なるほど…面白い。」
 呟く声はチャーリーの声に掻き消され、キルにさえ聞こえない。
「どういうって…。」
「知っていたんですか…。大叔父さんが生きていることを!!
 どうして隠していたんですか!僕が勇者であることも、
 大叔父さんが人間でなくなっていることも!!」
「ちゃんと話すわ…だからそう怒らないで。」
 突然怒鳴られ困惑するソーズマンとユーチャリスは睨むようにしてみる孫をどうしたものかと、顔を見合わせた。
「ローズは…いろいろ事情が複雑で…。」
「事情ってなんて知りません!なぜ嘘をついていたんですか!
 どうして父さんもおばあちゃんもおじいちゃんも3人して秘密にしていたんですか!」
 怒鳴るチャーリーに一行も困惑する。
そんな中、ソーズマンの腕から滑り降りたローズは睨むチャーリーの目の前に立ち、
軽く手をかかげる。くらりと立ちくらみをしたかのように揺れ、
チャーリーは軽く頭を振った。
「うるさいなぁ。まったくどうして影響が出るかなぁ…。
 いくらなんでも勇者の癖に人間に近すぎ。
 どうでもいいけど、これ以上ユーを悲しませると切り刻むよ。」
 夢から醒めたかのように目をしばたかせたチャーリーは、孫に何しているんだ、
というソーズマンに叩かれるローズを見た。
当の本人はすでにチャーリーの父…自身の甥を見上げ、眉をひそめていた。
「で…あんなに小さかったのにどうして僕より背が高いわけ!?
 ねぇ、あんなに小さかったのに!」
「叔父さんが小さいからで自分は標準サイズです。
 大体最後にあったのはまだ生まれたばかりだって言うじゃないですか。
 それと、家の中では靴は脱いでくださいね。」