ポリッター、ベルフェゴ、キル、かろうじてジュリアンの4人以外から見下ろされたローズは、怪我の手当てのためだということで一行が案内された座敷の隣で妹と昔の仲間らに囲まれ、怪我の手当てを受けていた。
あんたはこっちといわれたロードクロサイトとキルは隣の騒ぎに耳を傾ける。
 
「いたたたたたっ!!もうちょっと優しくやってくんない?」
「わざと痛くしてんだから痛くて当然だろ。」
「ほかは大丈夫なのか?」
「お兄ちゃん本当に痩せているのね…。全然筋肉とか見えない。」
「めんどくさい。身包み全部脱げ。」
「身包みって…アーチャー…。妹の前っていうか妹の家で肌着一枚になるとかないよ!
 ったぁー!」
 
 騒ぎが静まると戸が開き、背を向け魂が抜けたように倒れているローズが見え、
ソーズマンらが座敷へと入る。
すぐに閉められたが背中の傷が長い髪から垣間見えていた。
「まぁじゃあひとまず。チャーリー、ベルフェゴ。おかえり。
 皆さんもお疲れ様です。どうぞごゆっくり…といいたいところだけど、
 皆それどころじゃないって顔だな〜…これは話していいのかねぇ。」
 真剣なまなざしの孫や一行に見られ、ソーズマンは昔の仲間に視線を送る。
【ローズの正体というか素性はもう皆知っているんだ。
 今のことをいわなければまぁ…大目に見てやる。】
 そう念話でロードクロサイトが伝えれば3人は顔を見合わせた後頷き、
長い話になると口を開いた。
「俺とプリースト、ローズはこの村に生まれ、育った幼馴染だ。
 ローズは昔から小さくて、何よりも気の弱い奴だった。
 あいつが4歳のとき勇者であることが分かって…
 そして16のとき魔王を倒すため俺達は子の村を出た。」
 直前に出会ったロードクロサイトは気が弱かったか?
と考えるが人間に対しては臆病だったことを思い出す。
魔物である自分にでさえ置いていかれる恐怖を訴えていたあの頃を。
「チョングォ…今はなんかなまってジョングォっていうけど、
 あそこであたしはあいつに助けられて一行加わった…。
 孤児で貧しくて…毎日スリやら泥棒やらを繰り返して衛兵に追われていたあたしをね。
 あいつの目、変わっているだろ。
 はじめてあったときそれを隠すためにずっと笑ってたなぁ。
 あたしはそれが好きだった。」
目の色を指摘するとすぐに矢を向け、剣を向け、
仲間を守ろうとしていた青年と女性たちを思い出す。
確か自分も悪くない色だといったような気がするなと、ロードクロサイトは昔の…
伝説とさえ言われる一行の話に様々思い出していた。
目の色のことではその後魔物にほめられても嬉しくない、とまんざらでもないように笑っていた。
「あいつ、魔法属性は冥と闇以外だったし…。
 チャーリー、以前俺の剣はすごいって言ってたけどそんなことはない。
 俺よりもローズのほうが技術では格段に上だった。ただ力は昔っからないけど。
 すごい強かった。この辺であいつに倒せない魔物なんていないほどに。
 自分よりレベルの高い奴にもすぐに打開策を見つけて俺らに指示を出して…
 あっという間に倒すほどに。その反面あいつはすごく優しくて。
 誰隔てなく親切で優しくて、だれよりも純粋で純白でまぶしいくらいだった。」
 そう。勇者として生まれたローズは人を疑うなどの感情を持ち合わせていなかったうえに、生まれつきお人よしな静かな性格だった。
だが闇を生きるロードクロサイトにはそういった純白な心が人間から見ればどう見えると言うのが良くわかる。白い穢れのないものほど…黒く汚い色で染め上げたい闇を。
 
「初めて会った時いろいろひと悶着があったがあいつはそれでも俺を責めたりはしなかったな…。組み手ではほとんどかったことがない。
 そのくせ倒した俺に手を差し伸べて起こそうとするほど甘い性格で。
 腕を無理矢理引っ張れば簡単に倒れるほど軽くて、なのに背負っているものは重すぎて。
 一緒に旅をするというよりもシャーマンもプリーストも
 皆あいつを守ってやりたいってその一身で6人でいろんな町に行き、魔物を倒した。」
 伝説と呼ばれるいわれの一つとしてローズたちは数多くの魔物を倒し、町を救った。
ロードクロサイトの仕向けた魔物も退け、至高の勇者と崇められた。
ただ、ローズの異質な姿を心から受け入れてくれるものは救った数に反してとても少なかった。