結局一口食べただけでは許されず、
ぐったりと疲れた様子のローズにソーズマンら旧一行は苦笑いする。
小食が幸いしてかわりとすぐ解放されたのだが、
甥や妹にもっと食べなさいと怒られ、つかれきったようだ。
戻ろうとするローズをユーチャリスは放さない。
ローズは困惑気味な顔で小さくため息をつくとユーチャリスの好きなようにさせる。
【ロードクロサイト様、今夜だけ…今夜だけ妹の好きなようにさせてもいいでしょうか?】
【何日か滞在するんだろうが。どうかしたのか?】
突然念話で言い出すローズにロードクロサイトは眉を寄せ、
髪で表情の見えない部下を見た。
【以前修行のときに聞いたのですが2泊するだけだそうです。
最後の夜はプリーストに連絡をしなければならないので…
今夜と明日の少しだけでいいのでお願いします。】
【あぁ、そうか連絡しなければならなかったな。久々の里帰りだろ。
別に妙なことをしなければ好きにしていて構わないぞ。】
できるはずも無いがと言うロードクロサイトにローズは笑う。
そうだそうだと、ロードクロサイトはあることを思い出し、ローズに聞く。
【チャーリーにはばれていたんじゃないのか?大叔父だということが。
なのになんであんなに負の感情を出していたんだ?】
父と会話しているチャーリーにはあのときのような気配は微塵にも感じられない。
あぁ、そのことですかと言うローズは先ほどとは打って変わっていつもの調子で少し考える。
【どうもこうも僕と違って人間と同様に少しながら疑いや怒り、
不信などを感じるらしいのと、僕と一緒に居たおかげで、
闇の水晶の闇の力が少し影響してしまったみたいです。
それで一時期は僕に妹が居る、祖母の名を知っている、印がある、
勇者一行を知っている、祖母の兄が勇者、
光魔法を使う…と言うことで大叔父だというのは、
うすうす気がついてはいたようですが…大好きな祖母と親しいのや、
祖父母と父が知っていたのに自分に隠していた、
ということで自分の領域を犯されたように錯覚したんでしょう。
負の感情が増幅されて爆発ってところですね。】
だから闇の力を吸い取ったら戻ったんです、
とローズは説明しユーチャリスに再び腕を引かれたことでそちらに気を向けた。
「人間ってなんだかいろいろ変な感じですね…。
その中に溶け込めているあれが情けないです。」
キルはキルで一行になじんでいるようにみえる雑巾…
父ウェハースを見るとため息を軽く吐き、妹に遊ばれている師匠を見る。
外見の年齢やローズの耳が無ければ仲のよい人間のごく普通の兄妹に見えるな、
としばし見つめた。
しばらく和やかな時間が流れ、そろそろ寝る時間ですよ、
というチャーリーの母の言葉に案内された客間へと移動する。
最後に湯浴みをすることにしていた3人だったが、
ユーチャリスの一言にローズはぎろりとソーズマンを睨み、
ロードクロサイトとキルはその3人を残し先にいってしまった。
「お兄ちゃん、小さい頃みたいに一緒にお風呂入ろう♪」
「ユー。もう小さい子供じゃないんだから駄目。いくらユーでもそのお願いは駄目。」
キルに本来自分がやるべきロードクロサイトの世話を頼むと絶対駄目だと念を押す。
だがユーチャリスもユーチャリスで引き下がらない。
「ユーチャリス、さすがにそれはだめだろ…。後で背中流してやるからな?」
ソーズマンにいいなだめられ、
しぶしぶ引き下がったユーチャリスにローズは小さく笑うと2人の後を追う。
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