やっぱり間に合わなかったと、
うなだれるローズはそのまま湯船に浸かる2人を尻目に体を洗う。
この珍道中の間は一応護衛のローズがロードクロサイトの背を洗い、
キルが加わってからはキルが師匠の背を洗い…
が、今夜だけはユーチャリスを押しとどめるのに思いのほか時間がかかり、
間に合わなかったのだ。
せっかくのチャンスが、と内心どん底な気分で髪を洗おうとしはたと気がつく。
 
「湯船絶対2人しか入れないですよね?」
「あぁ、そうだな。宿と違って一般家庭だからな。
 どうせ髪を洗うのが長いだろうが…その頃には私たちは部屋に戻っている。」
「早く実家の風呂に入りたいですね…。」
 並んだ二人と湯船を見比べると一応入れそうだけど、と見る。
ローズとしては狭いほうが嬉しいのだが、
普通に思いを遂げたいということで逆に生殺しだということらしい。
「髪の毛ぐらい洗ってやるよ。」
 ぶつぶつと呟いていたローズだが、突然ソーズマンに頭をつかまれ驚く。
「いたたたた!いきなりなにすんのさ!!」
「洗ってやろうと思ってさ。久々に見るとすげぇ長いなぁっておもうよほんと。
 ホスターさんが居ないとき風邪引いたお前洗ってやってたんだから、
 お前の髪がすんげぇ猫毛だっていうのは分かってるよ。」
 目にしみたというローズにソーズマンは笑う。
 
 
 気がつけばキルは居らず、ロードクロサイトも居ない。
置いていかれたということと、ロードクロサイトに触れられずローズは落ち込む。
「そういえばなんだっけ名前…あぁ、ロードクロサイトだ。
 あいつ服の上からだと全然分からなかったけど意外と筋肉ついてたんだな。」
「むか〜〜〜〜し、初めて遭遇したときに気絶してた僕が説明した気がするんだけど。
 っていうか一日の僕のオアシスタイムが…眼福が…目の保養が…。」
 肩までしか見えなかったと嘆くローズにソーズマンは熱い湯を頭から掛けた。
「もうほんとお前いっぺん頭打ってこいよ。
 で、さっき自爆していたように見えたのってどういうことだ?」
「しょっちゅう組み手で吹っ飛ばされたときに打ってるよ…。
 ドMじゃないんだからやだ。チャーリーから聞いたと思うんだけど、ちょっとね。
 自分達の力がどれだけ弱いかを見せ付けるためにちょっと化けて禁術で変えてみたんだ。」
 だからチャーリーの説明に出てきた赤毛は自分だというとソーズマンは目を見開き若干引く。
「何で引くのさ!!僕だって不本意だよ!!」
「いやなんか想像したらどう反応したらいいのか分からなくて。
 って!!うわっ!!びっくりした!!!」
 怒るローズにソーズマンは複雑そうな顔で首をそらし、
突然ローズが光に包まれたことに驚く。
そのままシィルーズになったローズに今度こそソーズマンは壁際まで引き下がった。
「びっくりさせんなよ!心臓とまるだろ!老人を労われ!」
「あ、そういえばもう101歳だったっけ?見た目とか全然わかいから忘れてた。
 これがシィルーズって奴。どう?まずわからないでしょ。」
 碧眼を細め笑う幼馴染にソーズマンは脱力する。
「とりえあずわかったらから一言言わせろ。さっさと戻れ!!」
 半分体を向けていたローズにソーズマンは怒鳴ると首をかしげるローズを湯船に叩き込む。
「ちょっと!!びっくりした〜…。もういきなりなにさ。」
「うるさいアホ。」
 再び光に包まれ元に戻ると不服そうに眉をしかめ、ソーズマンを睨んだ。
睨まれたソーズマンはといえば親友でありながら弟のようなローズに頭を抱え深々と息を吐いた。