思わず言葉を失う一行だったが、ネティベルはロードクロサイトを見るとどういうことかと問う。
「私に聞いてどうする。当人たちの間で何かあったんだろう。」
 詳しくは聞いていないというロードクロサイトにうつむいたチャーリーが呟く。
「僕が…大叔父さんにあんなことを言ったから…。
 大叔父さんは今どこいますか?今ならまだ…。」
 はっと顔を上げ、ロードクロサイトに詰め寄るように問うと、
ロードクロサイトの隣にいたキルが首を振る。
「記憶を操作する呪文はそう簡単には解けませんし、
 失礼ながらご老体にはかなりの負担になります。
 それでも解きたいならば、同レベルの光魔法でなら解けるかもしれませんが、
 師匠は全魔法に関してこれ以上レベルを上げられないというところまで来ているので…
 まぁ無理でしょうね。」
 闇魔法でもできますが同じはず、とキルはロードクロサイトに一瞬だけ目配せするとそうだ
と言う答えが念話で返ってきた。
「記憶操作されているならその記憶に関する名前などは言わないほうがいいぞ。
 ひどい頭痛がするらしいからな。」
 そういえばローズがそういっていたなぁと思い出し、助言する。
どうしよう、と悩むチャーリーに無理させないほうがいいわねとネティベルが言う。
「兄ちゃん。大叔父さんは兄ちゃんに言われる前から決めていたみたい。町にいる時言ってた。」
 今では本当に最初の頃にあったときとはまったく体型が変わったベルフェゴはそういうと、
食べていた干物を飲み込んだ。
 
「そんな…。」
「すまないが…。どうしても気になる。
 その劇的ビフォアアフターな体型は一体どうしたんだ?」
 どうして、とさらに眉を寄せるチャーリー。
そんな中、解せないとロードクロサイトはベルフェゴ本人にいつからそんな風に変わったんだと聞く。
「…あぁ!ベルフェゴくんだったんだ〜。ほそいからわかんなかったぁ〜。」
「そういえば…最近少し小さくなりましたよね?」
 いまさらのように驚くアイアンとポリッター。
「ジュリアンも気にはなってましたけど…前の姿を覚えてないです。」
「そういえば最近食事マナーも随分改善されてたな…。」
「食べこぼしも少ないし。」
「そういえば最近食べる量減ったね!!」
「さっ最近…おっおいらの食べる量が減ってないような。」
 本当にいまさらのような雰囲気の中、当の本人はするめを噛む。
 
 
「…シリアスな空気ぶち壊しだなぁおい。」
「せっかく…あの変態…師匠のまじめな話が続いていたのに。」
 ソーズマンの言葉にキルは頷くと、一行のまさかの反応に言葉を失う魔王を見た。
「ベルフェゴ…この前の戦闘のとき剣を使っていたけど…お祖父ちゃんからじゃない…よね?」
「町にいる時大叔父さんに頼んだ。あのシィルーズの後…俺もいろいろ考えたんだ。」
 ちゃんと見ていたのか、ハナモモがやってきたときの戦闘を思い出し弟に問う。
ロードクロサイトの予想をはるか斜め上に超える答えに、思わずは?と口に出してしまった。
「魔王軍の四天王に勝つには今のままじゃだめだって。俺も戦えるようにならなきゃって…。」
「ベルフェゴ…。」
 あの馬鹿は何をしているんだと、内心あきれるロードクロサイトはさておき、
父ローズは感心したように頷く。
 夕食の時刻になり、ようやくもどってきた二人であったが、
やはり思い出している様子はない。
結局ローズのことを出さずに一行は出発の朝を迎えた。