究極魔法

 

「そんじゃあシルフとやら、あのこのこと頼んだよ。」
「俺らはここからクラリスさんお召喚獣に送ってもらう予定だから…
 キル君、君の師匠によろしくって伝えておいてくれ。」
「あたしらももう帰らないとね。キャシー、しっかり頑張るのよ。」
 クラリス、ファイタ−、アーチャーの3人はそこで見守ることとなり、
結局顔を見せなかったローズによろしくというと孫達一行の元へ行き、
頑張るよう励ました。
 ポウェルズ一家とその3人に見送られ、一行はフジベレストへと向かった。
 
 
【魔王様、こちらの準備はできました。】
 ローズからの念話に向かっていることを伝えるとローズからはしかし、という言葉が返ってくる。
【どうした?】
【いえ、まだ見てはいないのですが、むか〜〜しに戦い、
 弱体化させ封印した古の邪龍の気配が麓あたりからするので…まさかと…。】
 促せば見ないことには確証はもてないと、いう言葉と共に推測が帰ってきた。
【それで今悩んでいることですが、どう考えてもチャーリー達の力では勝てないといいますか…。
 非常に硬く、斬撃等の物理攻撃がほとんど効かないのと…
 魔法が弱点なのですが、一度与えた魔法とは別の属性が弱点になって…
 完全に消滅させるには全属性の究極魔法を同時に当てないと倒せないんですよ。
 シャーマンが冥属性のを唱えてくれたのでまぁ瀕死にし、やっと封印した厄介な魔物なんです。】
【そんな厄介なのがいたのか?】
 聞いたことがないな、とうなるロードクロサイトにキルが思い出すように顔を上げた。
【聞いたことがあります。なんでも魔界の神が天界の神に贈った嫌がら…魔物だとか。
 本当かどうかはわかりませんでしたが…。】
【あ〜〜それなら聞いたことがあるな…。それで…どうするんだ?】
 そもそも魔法レベル足りなさそうだからなぁ、というロードクロサイトにローズはうなる。
【まぁ昔の自分がやり残した事ですし…時間さえかせいでくれれば今度こそ倒せると思うので…
 まぁそれほどの動きができるかどうかも怪しいですが…。
 あ、こちらから見えてきたので直接お話します。】
 自分の尻拭いぐらいしないとですよね、というローズは一行を確認できたのか念話を切った。
 
 ほどなくして最後尾にいたロードクロサイトからも人影を確認するがどこかおかしい。
何が、と考えるが違和感だけが嫌に引っかかる。
「あぁ、ロードクロサイト様。チャーリー君たちも待ってたよ。
 この先に入り口があるんだけど…どうかした?」
 ん?と首をかしげるローズだがロードクロサイトとキルはシルエットの正体に気がつき、
思わず目を見張る。風になびく特徴的な長い銀色の髪がない。
赤いバンダナからすこし覗く程度の短い銀色の髪に若干短くなった前髪。
「師匠…髪が…。」
「あぁ、うん。ちょっとイメチェン。
 なんかすっごく頭軽くなっちゃってまだ感覚がなじめないけど…。変…かな。」
 驚くキルに言われ、ローズはこれ?というと苦笑するように笑う。
「随分短くしたな。」
「背中の傷を隠す必要がなくなりましたし。まぁまた伸ばしますけどね。」
 そのほうが食事にありつきやすいんです、というローズは首に見える傷に手を置く。

「あ、あの…大叔父…ローズさん。」
「で、話だけど。この先に厄介な龍がいてね。昔僕達が封印したんだけど
 ま〜た出てきちゃって。それを倒さないことには山に入れなさそうなんだ。」
 口を開き、一歩前に出たチャーリーの言葉を無視し、ローズは一行を見る。
先ほどロードクロサイトにした内容とそう変わらない説明をするとネティベルは少し考え込む。
「確かに…同時に魔法をぶつけるとなると大変ね…。それでどうしろと?」
「簡単なことだよ。僕はちょっとね、全魔法が使えるから僕は止めをさす。
 けど魔力がたりないから強化呪文をできれば全属性分僕にかけてほしいんだ。
 それと魔法の詠唱にはかなり時間がかかるから、その間のかく乱をお願いしたくて。」
 できる?というローズにエリーも進み出た。
「風魔法は引き受けよう。」
「植物系…水と土を引き受けるわ。」
「先生、僕が火やります!」
「チャーリー君にはかく乱役やってもらいたいから光は自分でするよ。
 闇は…お願いします。」
「あぁ、わかった。ついでに結界も必要だろう。それも引き受けよう。
 どれくらい時間がかかりそうなんだ?」
 ポリッターも加わり、基本の4属性強化をするメンバーがそろう。
そこにロードクロサイトも入り、打ち合わせが整った。
「あの…」
「あぁ、ベルフェゴはみんなの目になってほしい。気配を読む力は頼りになる。
 で、チャーリー君。気にしてくれるのはいいけど、
 はっきり言って僕にはもうどうでもいいから。あんまりうじうじしているといい加減僕も怒るよ?」
 わかった?と笑顔のはずが目だけ笑っていない状態で忠告すると一行は麓へと向かう。
しかたなく気持ちを切り替えたチャーリーだったが、徐々に見えてきた巨体に同じかく乱役のジュリアン達と息を呑んだ。