エリーとポリッターが加わり、老龍は苛立たしげに尾を打つ。
《この小ざかしいっ!この魔力銀月か!!おのれっ!》
キャシーの弓を弾き飛ばすと離れたところで呪文を唱えるローズを振り向く。
呪文をとどめるのに必死でローズは逃げることができない。
しかし、振り下ろされる爪にローズは軽くため息をつくと呪文を安定させるのに集中する。
「まったく…かく乱役もまともにできないんですか…。
とにかく…そのでっかい足どけてくれませんかね?重いんですけど。」
手元から伸ばした鋼鉄の糸で老龍の前足を引き止めるキルは、
ローズの頭上すれすれの爪を反対へとそらす。腰から短剣を取り出すとその姿をかき消した。
《どこへ行きおった?》
「その爪…邪魔ですね。そもそも長いと不潔です。」
白い閃光と共に老龍の長い爪が粉々に砕け、キルはそのかけらを手にする。
「魔剣の素材にしてもらおうかと思いましたが…こんなものではできませんね。
あぁ、師匠の髪をもらえばよかった…そしたらいい武器作れたのに…。」
「危ない!キル君!」
振り下ろされる尾にチャーリーは警告を発した。
だが、尾を打ち付けたそこには既に姿はなく、キルは首元に短剣を突き立てる。
だが剣ははじかれ、老龍の炎をよけるとロードクロサイトのそばへと降り立った。
「あ〜〜やっぱり効かないんですね…。疲れるんで見てます。」
短剣をしまい、爪の破壊に驚く一行にそう告げると本当に傍観者を決め込む。
「ローズ、すぐもどる。」
「…どうせとめても行くんでしょう。光魔法の前にもどってきていただければいいですよ。」
そもそも僕に許可とる必要ないんじゃないですか?
とため息をつくローズはうきうきとした様子のロードクロサイトにはいはい、とあきれる。
「大丈夫だ。どうせ素手でしかやらん。」
「それが心配なんじゃ…ないですか。」
次の魔法を唱えるため貯めていたのが完了し、ローズは再び呪文に集中する。
うきうきとした様子で掻き消えるロードクロサイトに老龍は突然後ろ向きに吹き飛ばされ、足かせに止まった。
「「「ちょ…えーーーー。」」」
全員の心の声が口をついて出てくる。
長身細身とはいえ老龍ははるかに大きい。
痛みにうめく老龍の正面に現れると振り向きざまに回し蹴りを入れる。
「ローズ、本気でこんなのに時間がかかったのか?」
「闇魔法がなかったからではないですか?」
何この鬼、と心の中で呟くキルは魔法を準備するローズを見る。
《この…いくらダメージがないからとはいえ我慢ならないぞ!》
怒りにほえる老龍にロードクロサイトはうるさいと顎下から蹴りを入れる。
「そうか。ダメージがないのか。じゃあ殴り放題けり放題だな。」
本気で鬼がいる、と一同引く中一応見慣れた光景ではあるためか、
キルとローズはまたかと呆れた。
「あれでいいんですか?」
「いや…もう…。ごめん。集中させて…。」
頭が痛いとローズは脂汗を浮かべたまま大きく息を吐いた。
「アジュ!その生まれいでる力強く、その速さは圧倒的。その生きる力を今こそ攻撃の力に!
究極植物魔法:真柄竹」
再び形をゆがめる球体は激しさを増し、ローズは思わずぐらりとふらつく。
「アジュ!万物を凍らせるその力、全てを飲み込むその力を今ここに!
究極氷魔法:雪崩」
まばゆすぎる光に目を細め、激しい光は強烈なまでに暴れ、地面をえぐる。
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