その向こうでは哀れにも見えるほど軽々と弄ばれ、
半分涙目になっている老龍がストレス解消につき合わされ、心なしかぼろぼろになっていた。
「あ〜〜楽しかった。」
ぼろぼろになり動きが鈍った老龍は手近にいるチャーリー達に狙いを定め、攻撃をする。
ロードクロサイトはすっきりとした顔で一人満足していた。
「アジュ!天空の煌き、夜の光を集め天を舞い、暗雲を裂き全てに光を降り注げ。
究極光魔法:光耀天空光」
地を揺らすほどの魔力にネティベルが合図を送る。
急いでもどってくる一行を見るとローズの後ろへと集まった。
ロードクロサイトはいつでもいいぞ、と促しローズの真後ろに移動する。
「アジュ!全てを覆いつくし漆黒の闇。光は闇へ溶け込み白くは黒く染まり隠す。
何人たりとも干渉できぬ絶対なる虚無の名において塗りつぶせ!
究極闇魔法:黒闇闇」
《貴様闇魔法を…。くそ!足を…》
これ以上ないほど激しい光を放つ球体にローズは踏ん張りがきかずに若干下がる。
巻き上がる風にローズ自身も傷を負い、短くなった髪を逆立てた。
ロードクロサイトに徹底的に叩きのめされた足が動かず、老龍はローズを真正面に見る。
「禁忌合成魔法:六極星覇者咆哮!」
激しい渦の中心である珠を握りこんだ左腕を、正拳を繰り出すように構え突き出す。
手を離れると同時に一抱え以上はある珠になると轟音を立て老龍へと飛んでいく。
《なんだ…この…。》
膨れ上がる光に吹き飛ばされるローズをロードクロサイトは受け止め、結界を発動させる。
まがまがしい形をした壁が現れ、幾重にも一行を囲む。
「なんて威力の魔法なの?」
「たくさんの魔法が…。」
結界越しに伝わる衝撃波に耐えるネティベルとチャーリーは、
ロードクロサイトに受け止められているローズを見た。
左腕が痛いのか体を丸めるせいで表情は読めない。
ロードクロサイトもロードクロサイトで結界を支える手が震える。
「どんだけ凶悪な威力なんだまったく。ローズ、大丈夫か?」
ロードクロサイトが直接魔力を与えていた壁にひびが入ったところで光が掻き消え、
ロードクロサイトは抱えたローズをのぞき見る。
だが、ぴったりと張り付いているためうめき声のようなものは聞こえるがやはり顔は見えない。
「師匠大丈夫で…。」
「はわぁ〜vvv幸せ〜。」
下から見上げるキルはローズの表情に思わず固まる。
びきっ、と額の角に力が入り、無表情で見上げる。
抱きとめられ、恍惚とした表情で張り付く師匠に頭痛を覚えると抑えている左腕に短剣の柄を叩き込んだ。
「いっ!」
「気がついたか。ローズ、大丈夫か?」
思わず声を上げるローズにロードクロサイトは気がつき、おろす。
左腕を抑えながら地面に立ったローズはがっくりとうな垂れ、小さく息を吐き出した。
「僕の鎮静剤が…。僕の至福のときが…。」
ぶつぶつと呟くローズはうぅ、と落ち込む。
聞こえていないのかロードクロサイトは結界を解くと目の前の光景にほぅ、と息を吐いた。
「ん?どうした?それにしても…ひどい威力だな…。あっちでは使うなよ?
私の寝床がなくなる。」
「当たり前です。僕の屋敷も吹き飛びますから。」
《お…の…れ…。ゆる…さ…。》
かろうじて原型が残った老龍は再びローズに襲い掛かろうとし、風に体を散らせて行く。
張り詰めていた空気が消え、ため息をついた。
不意によろけ、再びロードクロサイトに倒れるローズは眉をしかめ、
とっさにつかまれた左腕に悶絶する。
「何してるんですか…。」
「いや…今左腕がものすごい痛いけど、左足に力が入んなくて…。」
はい?というキルにローズは痛いという。
そこにネティベルがやってくると石に座るようにいった。
「キャシー押さえといて。」
「いいよ!」
「えっ!?ちょ…。いっった〜〜!!!!!」
押さえられ、左足を押されたローズは痛みに体をすくませる。
ブーツを脱がされ、再び足首を押されたことで悶絶するローズ。
「捻挫ね…。あの呪文でくじいたんじゃないかしら?
今薬草に捻挫のはないから…痛み止めだけでいいかしら。」
「あれだけ強い魔法を出したのに捻挫か…。」
ださい、と言外にいうエリーにローズは落ち込むが、
薬が塗られる強さにやはり言葉を失う。
「あの…大丈夫ですか?」
「まぁ…大丈夫だけど…。まったくわれながら情けない…。」
心配げなチャーリーに嘆くローズは答えるとブーツをはき、どうしようと考える。
見上げるとフジベレストは意外と険しい。
「肩貸しましょうか?」
ジュリアンの言葉に絶対嫌だと首を振るローズはじゃあ、と持ち上げられ瞬いた。
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