「前回背負って髪を引っ張られたからな…。あぁ、軽いからこっちのほうが持ちやすいな。」
「なっなっなっなっなっなっなっ!!!!」
 横抱きに抱えられ、ローズはこれ以上ないほど顔を赤くすると湯気が吹き出る。
「あ〜ローくんおひめさまだっこー!」
「うっさい!じゃなくて…なっなんですかこれ…。」
「持ちやすいんだから仕方ないだろうが。背負うと髪引っ張られるし、
 大体小さくて背負いづらい。」
 アイアンのおもしろ〜いという言葉に顔を赤くしたままうるさいというローズは、
近くなったロードクロサイトにどういうことですかと、しどろもどろに問う。
「おんぶにしてください!絶対髪引っ張りませんから!」
「わかったから服を引っ張るな!絶対に髪を引くなよ。」
 必死に訴えるローズは傷む腕ではない右手で胸倉を掴むローズに、
ロードクロサイトは背負うが、しがみつく左腕が痛み、あえなく観念した。
結局横抱きにされ、落ち込むローズにキルは面白いと微笑む。
 
 
【キルーー様!!!何時お戻りになりますかーー!!】
 突然の叫ぶ念話にキルどころかローズとロードクロサイトにまで聞こえ、
キーンと耳を突き抜ける。
3人そろって一瞬ふらつくのにチャーリーは驚くが、
ダメージの蓄積で目を回したローズを心配する。
【クラマ!?どうしたんですか?】
【ほっほっほ。からかいがいがあって面白いのぅ。
 妾が食べるんじゃ、油臭いのぐらいがまんせぇ。】
【某に油料理を近づけるなぁ!!!大体毎日毎日、油!油!油!油!
 タマモ殿は肥え太るのが望みか!】
【オイルカットじゃよ。それにこの油は妾の毛皮に程よい油分をもたらす。
 烏天狗の好む油とは違うんじゃよ。】  ふぁああ!と嘆くクラマと笑うタマモの会話にキルはそういえば、と思い出した。
タマモが暇になるとすることといえばクラマをからかうこと。
仲はいいのだが、なにぶん年齢不詳のタマモとまだ若い烏天狗で生真面目なクラマ。
【二人とも、念話で丸聞こえです。もう戻る予定だったので…
 クラマ!窓開ければいいでしょうが!
 タマモさんもあんまり油とっていると毛がネトネトになりますよ。】
【お前らの大声でローズが目を回したんだが…。フェンリルやミズチに言った方がいいか?】
 呆れるキルと、目を回して気絶しているローズを抱えたロードクロサイトの言葉に念話ごしにでも二人の血の気が引くのを感じた。
【そっそれではキル様、お待ちしておりますので…。】
【妾も作業に戻るかね…。あ…セイ殿…とハナモモ…。げっ元気そうじゃのぅ。】
 念話がこないよう、強制的に切った二人は切り際に聞こえた犬のうなり声と先ほどの老龍よりも若い唸り声にご愁傷様と心の中で手を合わせる。
 
「どうかしたの?!山登るの?!」
 キャシーの大声に念話から戻った二人は目を回したローズに目を落とし、
向かってくる女性の姿を目に入れた。