「だっ大丈夫?とっとにかくみんな疲れているだろうから…こっちに癒しの水があるわ。
あぁ、ローズ大丈夫!?っていうか髪…。短くなってる!?え?何があったの!?」
半分パニックになっているプリーストにローズを渡すとさらにおろおろする。
「女性に横抱きにされてるって知ったらショックを受けそうな気が…。」
「いや、結構もてるもんなんだなと…。そういえば天族同士だとおもさがないんだったか?」
「じゃあチャーリー君もかるいんですか?」
かろうじて身長の近いプリーストは引きずりそうになりながらも抱える姿に、
ポリッターはチャーリーを見るが、本人は当然ながら遠慮しますと首を振る。
「あ、チャーリー君は人間だからむりなの。ローズは限りなく天族に近いから…
闇の水晶の重さしかないの。あ、だからって人間にとっては普通の重さだけど…。」
せめておんぶにと、背中に乗せると一行を泉に案内した。
泉のそばに寝かせると一行が水で回復している間に捻挫に薬を塗り、
防寒具を身につけさせる。
「この先寒いのか?」
「ローズがものすごく苦手なね…。これでよしっと。
魔力不足はまぁどうせ私の魔力じゃ微々たるもんだし…。」
みんなにもマントを、と渡すプリーストに雪に覆われたフジベレストを見上げたロードクロサイトはたずねる。キルはキルでやっぱり役に立っていなかった…半ば忘れていたウェハースに呆れつつ、麓にいることを確認した。
「あぁ、ここはもう麓なんですか。師匠のこともいろいろ心配ですが、
鬼なのでこの先には…。申し訳ございませんが、ここで失礼いたします。」
「えぇ?キルくんもうすこしいればいいのにぃ〜。」
だめ〜と引きとめようとするアイアンにキルは笑顔の裏で本番どれほどダメージを与えてやろうかと計算する。
「ウェハースさんももしかして…。」
登れないのだろうかと、チャーリーがウェハースを振り返ると、
プリーストは大丈夫と首を振った。
「あ、その魔剣士のおじさんは私が結界を張るので大丈夫です。」
本気で亡き者にしてやろうかと、キルは思わず短剣を握り締めた。
その柄を押しとどめる手にキルは見上げると、
目を覚ましたローズがだるそうにやめときなと押しとどめる。
「プリーストくんの遅い…。キル、悪いけどちょっと頼みごといい?」
「はい?まぁいいですけど…。」
今度こそがっちりと巻かれた左腕の包帯にため息をつくとこっち、と軽く耳を叩く。
【なんで念話閉じてんのさ…。びっくりしたよ。
戻ったらセイとハナにそろそろ戻るからっていっといて。
なんかこっちも念話できなくて…。というかなんかに怒ってる?】
そういえば哀れな2軍副将の念話が聞こえないよう閉ざしていたな、
と開いたキルとロードクロサイトはローズの言葉に軽く顔を見合わせた。
【まぁ何かあったんでしょう。わかりました。
ついでにケアロスにも治癒の準備をと伝えてきます。】
【とりあえずキル。先にあの二人をねぎらってやるんだぞ。
たぶん怪我してんだろうからな。】
「怪我!?なんかあったの!?」
思わず口に出たローズはロードクロサイトのひじ打ちにうずくまる。
突然の大声にエリーらが振り向くがはたかれるローズになんとなく納得し、
武器の手入れに戻った。
【本当に念話苦手だな…。普通に話すのと同じだろうが。】
【生粋の魔界人ならそうでしょうが…。とにかくすみません。】
【それでは戻りますので…。怪我の理由については城に帰ってからお話します。
日常茶飯事のことですが…。】
それでは、と一行に挨拶するキルはふわりと宙へ浮く。
「いずれ会うことがあるかもしれませんが、そのときを楽しみにしてます。」
「いずれ会うって…。」
にっこりと笑うキルはジュリアンの言葉には答えず、青白い炎に包まれ掻き消えた。
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