「いっちゃったねぇ。」
「――――。―――。――。」
 訳す人が現在どうやって消えたんだろうと、考え込んでしまって役目を果たしていないが、
ジミーの言葉にやっぱり基本頭がいいんだな、と二人は感心する。
まぁ聞こえていないおかげでその頭のよさも役にはたっていないが…。
「えぇっと。チャーリー君たちももう大丈夫?なら出発するけど…。」
「はい!よろしくお願いします。」
 プリーストにチャーリー達は頷くとロードクロサイトはローズを持ち上げた。

 
「はぁ〜。まったく…なんて情けない…。ロードクロサイト様、お願いします。」
 プリーストのように覆いかぶされれば腕に負担は無いのだが、
ロードクロサイトにはしがみつかなくては背負ってもらえない。
「ごつくないのが幸いだが…。ごつかったら絶対に抱き上げ出ないだろうな。
 あっちの姿ならよかったんだが…。」
「今非常に不適切な言葉が聞こえた気がしたんですが…。
 あっちってまさか赤毛のほうじゃないですよね?」
 やれやれとため息をつくロードクロサイトの呟きを真下で聞いたローズは眉を上げた。
「あ、ローズ。結界を張ってくれ。そろそろ光の力が強くなってきた。」
「ごまかされた気がする…。魔力少し分けてください。
 そのまま歩いていて大丈夫ですから…目を閉じてください。」
 山の入り口に差し掛かり、話を変えたロードクロサイトにローズは疑いの目を向け、
支えられている手から魔力をもらう。
「―――。――。」
 ロードクロサイトには聞き取れないささやきのような言葉を発すると
ロードクロサイトにまとわりついていた不愉快感が消え、ローズはため息をついた。
「っていうか…ロードクロサイト様の歩調…眠い…。」
「ん!?何時間寝るつもりなんだ?」
 眠いというか否か、寝息を立てるローズにロードクロサイトはあきれ返る。
マントをローズに巻きなおすと先を歩く一行の後を追う。
 
「すごい寒さですね…。あ、ポリッター君大丈夫ですか!?」
「こっこんなにさっ寒いなんて…。」
 マントを身にまといながらぶるぶると震えるポリッターに、
同じくマントをしっかりを巻いたチャーリーが声をかける。
 
「ねぇねぇ。みんなどーしてそんなにうごきづらそうなかっこうしているのぉ?」
 
 ねぇどうして?と間延びした声が聞こえ、ジュリアンとネティベルは目を見張った。
いつもの踊り子の服装にマントが首に結んであるだけの姿…。
よって風になびいて踊り子の服装が全開だ。
「あなたに寒いの概念ないのかしら?」
「え〜だってヴァッカーノくにはこんなかんじのときあるよぉ?」
 でもさむくないよ〜とあきれ返るネティベルに、
アイアンは全身吹雪で雪塗れになりながらいつもどおりの笑顔を向ける。
「ヴァッカーノ国でしたっけ?たしか…最北の大陸にある国ですよね。
 なんかうわさでは学者の人が入るとそれっきり戻ってこないとか…。」
 ポリッターの言葉に何が起きてるの?とジュリアンとキャシーは顔を見合わせた。
「えぇっとねぇ。むずかしいことはなしてたひととかが、
 すこしくらしてるとね、なんかむずかしいこといわなくなって?
 バカニナールウィールスがどうとかいってぇ…とけこんでくれるの。」
「つまり馬鹿になるウィルスとかいうのを調査しようとして、
 ミイラ取りがミイラになるわけか…。恐ろしい国だな…。」
 離れていてよかったと、エリーは見ていると寒いと目をそらす。
「ゆきがこんなにふったときはね、かんちゅーすいえいっていって、
 みずぎでゆきのなかに。」
「それ以上いわないで。考えたくも無い。っていうか凍死しないの?普通…。」
 たのしいよ?というアイアンにネティベルは当然の事ながらやめてという。