【そういえば…フェンリルは昔片言だったと思うんだが、
随分イングリシウ語がうまくなったな。】
【昔は獣の言葉しか知らなかったですからねぇ。聞き取れても話すのが難しかったそうで…。
ねぇ、ハナモモ。】
なまりもなく、普通にわかるイングリシウ語を話すハナモモに、
ロードクロサイトは昔を思い出しながら問えばローズが答える。
もともと勇者時代に暴れていた大犬を退治し、
そのときにはぐれていた子犬とローズが出会ったのがそもそもの始まりだ。
その後一人旅をしている途中に再会し、
そのときに名前のない子犬にローズがハナモモと名をつけた…
というのが出会いらしい。
詳しい話は知らないが、以後年下のローズを父親ともなんとも慕っているとか。
【はい。波長が合うそうで獣の言葉でも辛うじて通じたのでそれで…。
人間の近くにいたこともあったので多少はジャポネーゼ語も話せた…
というほどまともなものではありませんでしたが…。】
【キスケとはどうも波長が合わないみたいで…。
ハナモモは元からイングリシウ語に近いような言葉を発していたのでそれでです。】
ようやく満身創痍になりながらも戦闘を追えた一行は、
プリーストの超絶な味の薬にネティベルともども言葉を失っていた。
それではと念話が途切れ、そういえばとロードクロサイトはローズの足を軽く押さえた。
「いっ!!いきなりなんですか!?」
気を抜いていたローズはいきなりつかまれ、身をすくめる。
「まだ痛むのか…。まぁ軽いからぜんぜん負担ではないが…。大体小さいし。」
「小さい上に軽いって…喧嘩売っているんですか?」
抱えなおすロードクロサイトにローズは睨むが、
何とか回復した一行と共に移動するため慌ててしがみつく。
「ローードクロサイトーーー!!あんた余計なことしたでしょう!!
足腫れてるじゃないの!!」
両手でローズを抱えているために防御できないロードクロサイトに、
プリーストは魔道書を振り下ろした。
身長の関係で背中にしか当たらないが、それでもヒットしプリーストはあ、と顔をほころばせる。
「やっとあんたに攻撃あたった!!」
「あのねぇプリースト。何度か攻撃当ててるでしょう。」
「角を当てるな。ちょっと腫れているか掴んだだけだろうが。」
ばしばしと叩き続けるプリーストにロードクロサイトが片手を使えるよう、
どさくさにまぎれてしがみつく。
「さっきのを見る限りでは強いのに…なんでこうなのかしら?」
「年齢的には確か3桁だったはず…だよな。ネティベル。どうもそう見えないんだが…。」
わーわーと騒ぐ3人に呆れる人間の年長二人組み。
ポリッターやキャシーがアイアンのまねをしようとするのをとめ、
先が思いやられるとため息をついた。
ふと、そこでそういえば最終的なボスはこの部下を抱え、
その部下に思いを寄せる自分の師匠に叩かれている長身細身の男。
のはず、と思い出した。
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