「それじゃあ…ローズさん。ここでお別れなんですよね?
 本当にいろいろ…ありがとうございました。」
 さぁいよいよ天界へ、と言う場面でチャーリーは振り向くと
また怪我が戻っている左腕と痛みは引いた様子の左足に眼を留め、
深々とお辞儀をする。
そういえば、と一行も思い出しアーチから離れた二人を見た。
「いろいろ楽しかったです。変質者様あらため、ローズさん、ロードクロサイトさん。
 またどこかでお会いできたらお給仕させてくださいませ。」
 久しぶりにジュリアンに話しかけられ、
そういえばローズの呼び名はこんなだったなと、怒るよりも先に記憶をたどる。
「―――。――。――――。」
「あのねぇ、ジミーくんがたのしかったって。またへっちゃうのさみしーけど、
 いつでもうちのくににあそびにきてねぇ。かんげーするよー。」
 またどこかで戦うことになりそうだが、また旅ができたら、
とそういう内容のジミーの言葉をどう間違えているのか翻訳するアイアンに、
二人はそろって社交辞令のようにわかったと言うが内心は当然行くわけがないだろう、
というツッコミだ。
ロードクロサイトに関してはあまりかわらないのではないかとも思われるが、
一応ウィルスは怖いしアイアンのようになったら最悪だと、ローズは思う。
 
 
「そっそれじゃあ…。キッキルとシッシヴァル…さんによっよろしく…。」
「絶対僕も究極呪文習得していつかあっと言わせますから!それまでお元気で!」
「今度はローズさんもお腹いっぱいになるご飯作れるようになるね!
 風邪に気をつけてね!」
 キャシーの声でかき消されぎみなウェハースの声は、
ポリッターの元気な声にもかき消されぎみになる。
キャシーの料理に関してはローズは内心、それは無理でしょうと、苦笑した。
「まぁ楽しい旅になったわ。すぐに会うでしょうけど、手加減はいらないわ。」
「本当に面白い旅になった。城出して正解だったな。次ぎ会う時は全力でな。」
 二人の正体を知っているネティベルとエリーは二人に聞こえるよう言うとまたな、
と声を上げる。
 
「オレ…もう逃げたりしない。憧れとか、そんなんじゃ勇者はできないってわかったから…。
 いつかちゃんと期待されるだけの器になって…家畜以下にはもうならない。
 今度会うときはかなわないかもしれないけど、それでも全力のオレを見てください。」
 ベルフェゴの決意に満ちた目をみたローズとロードクロサイトは顔を見合わせ、
ローズは満足げに笑みを浮かべると頷く。
師弟関係にちかいローズとベルフェゴだが、
ローズはその成長と言うよりもシィルーズの正体に気がついている様子に楽しみだなぁ
とチャーリーを見た。
「僕は…ずっと貴方達に会うまで自分が勇者であるなんてわからなかったかもしれません。
 それにローズさんがどれほどの力を持っていて、それでも魔王にかなわなかったか、
 それさえもきっと知らずにいました。迷惑かけっぱなしでしたが…
 本当にありがとうございました。ロードクロサイトさんもお元気で。
 どこかでお会いできたらまた会いましょう。それでは…ローズさん…大叔父さん。
 僕達は魔王を倒すべく最後のたびに行ってきます。
 大叔父さんの果たせなかった打倒魔王を力の限り頑張ります。」
 ありがとうございました、と頭を下げるチャーリーにローズはやや冷ややかな眼を向けると、楽しみだね、と微笑む。