とっさに反転したローズが下敷きとなり、ロードクロサイトは全くの無傷。
「だっ大丈夫か!?ローズ?」
「いつつつつ…。大丈夫ですか!?ロードクロサイト様!僕は大丈…ぶっは!」
 心配そうに元凶を覗き込むロードクロサイトの顔を視野に入れたローズは、とっさに押さえた右手に赤いしずくが散る。
「だっだっ大丈夫なのか!?!?鼻血が…。」
「いや…本当に大丈夫です…。」
(やばい!やばい!!この状況!!!これってもしかして…魔王様に組み敷かれ…落ち着け!インキュバスの血よ!!今はまずい!)
 なおも心配そうなロードクロサイトに助け起こしてもらうと、一部始終を見ていたはずが我関せずといった様子のネティベルを盗み見る。
彼女はそのままやっとモンスターを倒した一行へと向かい、女性と一部だけ回復し、ポリッター達には冷たい言葉と蹴りを加えて甦生していた。
 
 起き上がってすぐに止まった鼻血を拭うと、どこで洗おうかと水を探す。
不意に腕をつかまれ、振り向くとロードクロサイトが手に付いた血を見つめていた。
天然ボケな魔王が何をする気なのか感づいたローズは素早く手を引っ込める。
「なっなにする気だったんですか!」
「え?だって…血は血だろ?だから…。」
 やっぱりそういうことですか!
と心の中で叫ぶローズは多少の痛みを我慢して水攻撃呪文を唱え、洗い流す。
あっ…といっている目の前の人物に向きなおった。
「だからって…鼻血ですよ!流れている血はどっからでも同じでもやめてくださいよ!!」
「いや…しかし…。そうは言ってもだなぁ…。勿体無いじゃないか。」
「勿体無くないです!吸いたかったら今晩吸っていいですから!」
 ここは声を抑えつつ、まだ文句を言うロードクロサイトをつれて馬k…勇者一向へと向き直った。
 
「あ、ここにまだついているぞ。」
え?と振り向くローズの鼻頭についた血を…。
「そろそろ欲しいから今夜頼む。道中寄って行ってもいいが…騒ぎを起こすのは面倒だから。
それに流石に料理だけでは…ロッローズ!?」
 先ほどよりも勢いよく鼻血を吹き出したローズはそのまま倒れこみ、
慌ててロードクロサイトが抱きとめた。
流石に貧血を起こしたのか目を回しているローズに回復魔法が施される。
「…仲がいいのは分かったから…そういうのは2人っきりの時にしてちょうだい。」
 唱えた当の本人は、今度こそ戦闘不能に陥った弟子を片手に溜息をこぼす。
辛うじて先ほどの会話と行動は見られていなかったようだが、何かを察したらしい。
「まぁ長年の付き合いだからな…。でもだからといって鼻血噴くとは…今までなかったからなぁ。血圧でも上がったんだろうか?」
「…哀れな奴だな。」
最初の一撃のみ手を加えていたエリーは、ロードクロサイトに抱えられている
”哀れな奴”に目を向ける。
 
「--------------」
「ジミーがだいじょうぶかっていってるよぉ〜。ローくんはなじだしすぎだよ〜。」
 何度言ってもローズと言う呼び名を覚えないアイアンは、
相方の言葉を翻訳すると笑顔のままローズの肩を叩く。
「どうかしたんですか?あ!大丈夫ですか!?すごい鼻血ですよ。」
 やっと弟の手から解放されたチャーリーは、ロードクロサイトに助け起こされているローズの鼻血を見るなり慌てて水筒から水を出し、濡れた布を差し出した。
「ちょっと…無理。」
 太陽光+貧血でまいっている様子のローズにロードクロサイトは思案する。