ぼ〜〜っとしていると何時間かたったらしく、夕暮れとなった。
「調子に乗りすぎた…いつつっ…。誰も…誰もいないよね?少し…休もう…。」
がさがさと、ロードクロサイトがいる生垣の背後で声が聞こえ、
ロードクロサイトは気配を殺したまま声の主の動きを追う。
丁度背後に座ったローズはしばらく枝を揺らしたかと思えば寝息だけが聞こえる。
「また寝ているのか?」
呆れたように立ち上がり、生垣越しに下をみれば横になったローズが眠っていた。
食事後、湯浴みをしたらしく、髪が濡れている。
べし、と頭を叩くと驚いたのか飛び起き、そのまま地面に落ちた。
キョロキョロと辺りを見回すローズを隠れたロードクロサイトは笑いをこらえる。
「何!?誰?」
立ち上がったところでローズの身長では生垣の向こうは見えない。
寝たふりをして犯人を捜そうと横になるローズだったが、再び深い眠りに落ちていく。
生垣の隙間から手を入れ、脇を軽くくすぐる。
「ひゃぁん!」
妙な声を残し、再び落ちた。
「妙な奇声を出すな。」
「え?魔王様!?どこに…あっ。」
おい、と声をかけるロードクロサイトにローズは驚いたように振り向き、
生垣から覗くロードクロサイトにようやく気がついた。
「どうして…。」
「ここは城の中庭だぞ?妙な声を出すんで気がついたが…。」
叩いたりくすぐった本人であるのに、
たった今ローズの声で気がついたように装うロードクロサイトにローズは首をかしげる。
「今叩いたりしたのだれだったんだろう…。」
「なんだ?」
まったく気がつかないローズに笑いを堪えるロードクロサイトは、
生垣越しに頭を撫でると怒り出す前にじゃあな、
と振り向き、髪をひかれて立ち止まる。
「髪を引っ張るな…。」
「よぉ〜〜く考えるまでも無く、こういういたずらするの魔王様だけじゃないですか?」
生垣によじ登ったローズが不安定な足場に揺れながら、
ロードクロサイトの髪をつかみ、睨みつけていた。
その手を簡単に払うとバランスを崩し、落ちそうになるローズの腕を掴む。
「手、離してもいいか?」
「できればちょっと今離れられると落ちるので…。」
うつむき、ぷるぷると震えるローズの肩に手を入れるとそのまま引き下ろし、
自分が今まで座っていた場所にローズを座らせる。
「まったく。そもそも屋敷の庭で寝ればいいだろうに何でここで寝ているんだ?」
「近かったので…。あの一行のおかげで四天王長としての感覚がなんか変です…。
なんていうか…ソーズマンたちと一緒にいたときの感覚に近いと言うか…。」
はぁ〜とため息をつくローズは困ったなぁと短くなった髪をなでつけ、
付いていた葉を払った。
「そういえば…驚いたときなんかにあげる叫び声が昔に戻っているな…。」
「そこで判断しないでくださいよ。」
眉を上げるローズは顔にさしかかった影にロードクロサイトを仰ぎ見る。
「そういえばこの前髪はあんまり切らなかったんだな。
私もそろそろ毛先を整えるぐらい切るか…。よく自分で短く切れたな。」
バンダナを外されたローズははっとしたように慌てて手で押さえるが、
肩に置かれた手にどうしよう、とため息をつく。
「これはその…通りがかりの…その…。老夫婦に…いっ!」
「ソーズマンたちだろうが。記憶消した後にあっているとは…いいのか?それで。」
目をそらすローズの頭をバンダナで叩くとひるんだローズの額をはじく。
悶絶するローズだが、以前ノーストラリアで同じように弾かれたときを思い出し、
一瞬だけにやりと笑う。
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