城内を散策するロードクロサイトが次に会ったのは、
珍しく2足歩行をしている氷結の獅子、ムファスカーだった。
やろうと思えば獣人のように振舞えるらしいのだが、
長年4つ脚なのでそっちのほうが安定するらしい。
普通の獅子と変わらない彼は現在何か見ては大きく息を吐いている。
「何をしているんだ?」
「うわぁああ!!!とっとっとってまっ魔王様!?おっ脅かさないでください…。
ドルイドンかと…。あぁよかった…。ドルイドンとかフェンリル様とかじゃなくて…。」
思わずほえるような叫び声をあげたムファスカーは、
ロードクロサイトを認識すると服を着たまま、4つ脚の姿勢になりへたり込む。
「どちらかといえばドルイドンに会いたかったんだが…。
で、無事だったのか?ローズを怪我させたことで…。」
「さっ3時間火炙りの刑に…。おかげで尻尾の氷が…。
あの闇の集合体の事件が無ければ今頃ただの獅子になっていたかも…。」
「てめぇはただの百獣の王(笑)だろうが。炎火の獅子とか雷帝の獅子とかじゃなく、
何で氷結なんだ?ぁん?っと、魔王様。久しぶりだな。海のほうは俺に任せとけって。」
焦げた尻尾を見るムファスカーにけりが飛び、小柄な男が現れた。
肌は薄いグレーで地上で言う海賊のような服装に、黒髪のドレッドヘアー。
右目に大きな傷が入り、その目を閉じている男はローズよりも背が低い。
「ドルイドン、ひさしぶりだな。キスケから聞いていると思うが…
あんまりいたぶり過ぎると全滅の可能があるんで様子を見て攻撃を仕掛けてくれ。
と…ジョングォ地方のチャイナ服はやめたのか?三つ編みよかったと思うが…。」
「足が動きやすいんで。まだ完全な獣人じゃねぇんで安定してねぇけど、
気分で姿が変えられるんで結構気に入ってるぜ?」
逃げたそうなムファスカーを捕まえ、肩をすくめるドルイドンはガラ悪し、
口悪しの人間で言うチンピラのような魔獣だが、元から人型に変化できる能力を持っている。
長い間はできないことや、淫魔らの繁殖能力などに頼れないなどの欠点はまだあるが、
獣人にはなりかけている。
「魔界もまだまだ進化途中のものが多いからな…。じゃあな。」
「おう。ムファスカー、てめぇ…。俺の変身もう解けそうなんだよ。
陸じゃあ俺は歩けねぇからよ、海辺までおめぇが走れ。」
「なっなんで…いたっ!ごめんなさい!おぶります!あたたた!」
とっととしやがれ、とかがんだムファスカーの背で、
ドルイドンは元の魔獣へと姿を変えた。グレーの肌にやや欠けている上ヒレ。
人型に化けている時よりもはるかに大きなイルカとなったドルイドンの尾びれに叩かれ、2足歩行で走り去っていくムファスカー。
仲いいなぁ、と見送ったロードクロサイトはローズに仕事してください、
と怒られるまでのんびり自由に城内を満喫していった。
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