ダウンしたローズはさておき、ロードクロサイトは蝙蝠を海岸沿いへと飛ばした。
「あら、珍しく監視しているのね。ローズはまだ寝ているそうだけど…。」
「あぁたまにはこうして見ていた方が面白いだろう。」
 蝙蝠の作る黒い渦が、飛ばした蝙蝠たちの目に映る光景を映し出し、
それをフローラとロードクロサイトが覗いていた。
「あぁ、いたいた。あれ、ジミー=メイデンじゃないのか?」
「虫が主食の吟遊詩人?人間にもそんなのいるのねぇ…。」
「いや、あれは一応召喚術師だ。」
「…シャーマン的なのかしら?」
 一匹の蝙蝠の視界に緑色の帽子が見え、
接近すると食料を捕まえているジミーががさごそと草を揺らしている。
その様子を青白い小さなトカゲにも見える龍が泡から顔を出し、見張っていた。
【セイ、他の連中はどこにいる?】
 念話で問えば蝙蝠に気がついたセイが振り返った。
【先ほど変な飾りの付いたバカっぽいような変な少女が踊っていたのと、
 頭に眼鏡をかけ、眼鏡をかけた少年が眼鏡をかけようと新しく出していたのと…
 付き猫たちと似たような服装の少女がいましたね。】
 アイアン、ポリッター、ジュリアンをみたらしい彼女の言葉に、
ロードクロサイトはあぁ、と頷く。
4桁弱の年齢になる彼女にとっては人間の20代など赤子も同然。
そのためにアイアン達を少女と呼ぶのだが、それにしても違和感がありすぎる。
 
 
【他の一行もいるということか…。準備ができたら海まで追い込んでくれ。】
【了解しました。ところで…ジキタリス様のお風邪はどうなりましたか?
 ハナモモも現在出かけているので…。】
 ロードクロサイトの指示に従うセイは頷くとダウンしている四天王長を気遣う。
【今は怪我の治療で治癒の間にいる。風邪は大分治ったそうだから大丈夫だ。
 あっ…蝙蝠をひとつやられたな…。】
 心配するなというと飛ばした蝙蝠の異変に気がつき、やれやれと息を吐いた。
「ばれたのかしらね。」
「さぁな。あ〜でもまて他の蝙蝠から見れば…。ん?何でこんなところにいるんだ?」
 次々と飛ばした蝙蝠達が写す光景を換えていくロードクロサイトは、
そこに写った2人の姿に眉をひそめた。
「あら…あの逃げ出した騎士にみえるわね…。それとその血縁者かしら?
 科学者のような女性ね…。」
 覗きこんでいたフローラの視線の先にはガシャガシャと鎧の音を響かせた…
パシとヘイラーの姿があったのだ。
ネティベルらも気がつき、驚くとヘイラーの言葉に一番近くにいた蝙蝠を攻撃する。
すんでのところで避けた蝙蝠はそのまま移動させ、
やや離れた蝙蝠からその光景を見続けた。