引きずられるようにして連れて行かれたローズと入れ替わるように、
黒装束に身を包んだキルが師匠に呆れた視線を送りつつ、中へと入ってきた。
「化身が性別逆転というのは…。どうかしましたか?」
 なにをしているんだ、と呆れている様子のキルは頭を抱えてしまった魔王に首をかしげる。
「あれがローズと別だったらなぁ…。」
「何がです?」
 ぶつぶつと呟くロードクロサイトに、
キルは一行とセイの様子を見ながらさらに首をかしげた。
「どうしましたか?」
「なんでいつもいつもこう…気になったのはみな旦那もち、子持ち…
 今回にいたってはサキュバスでも結局はインキュバス。なんで問題ばかりあるんだ。」
 はぁ〜、とため息をつくロードクロサイトは、
別の蝙蝠が写すウェハースにやれやれと、一行のいる場所へ蝙蝠の渦を作らせ合流させる。
当の本人はまったくワープしたことに気がついていないが、
セイの片頬が引きつるのが見え、心ばかしか攻撃の手が強まった。
 
 
「はぁ…。」
「そういえばキルには許婚がいるとか…。」
 頭にクエスチョンマークが出しながら相槌を打ち、
セイに殺さないよう半殺しでと念話でお願いする。
ロードクロサイトの言葉に少し考え、頷き、えぇっと考えはじめた。
「確か…名前は今の当主の親戚で…。名前は…えぇっと…。
 ア…ア…アプサラスです。
 随分前に名前と詳細?みたいなのを聞いただけで、
 あったことがないので詳しくはわかりませんが。」
「確かムファスカーは5匹の子持ちで…
 ドルイドンも確か次の求愛の季節になったら番になるとか…。」
「魔獣、獣人の寿命はそれほど長くないですからね。他には叔父さんも双子がいますし、
 噂ではハナモモとシャムリンが怪しいとのことですし…
 それとクラマがつい最近、数少ない烏天狗の女性と付き合っているようで…。
 先ほどタマモさんがしめて…聞いていました。」
 テンションが低いロードクロサイトに、キルは再び首をかしげ、
 軍内部の家族構成について答えた。
 本来、寿命の無い吸血鬼や、長寿で性質上子孫が多くなる淫魔はあまりそういうことは考えないのだが…。
「吸血鬼には寿命がないのでそこまで気にしなくてもいいんじゃないでしょうか?
 エメラルダ様…魔王様のお母様はセイさんより歳が上だそうですし…。」
「え!?確か500歳ほどだったといっていたはずだが…。まただまされてたのか。」
 定期的にやってくる魔王の両親…エメラルダ達は、
さまざまな意味で軍全体にダメージを与える。
主なの被害者は夫婦に血を吸われるローズと、
周辺警護の魔物たちで立ち去った後の光景はまたすごいものである。
息子には若い部類の年齢といっていたのだが、
4桁に上る年齢で夫との年齢は倍ほど離れていた。
キルの表情でようやく気がついたロードクロサイトはがっくりと呆れ、落ち込んだ。
「セイさんも大変ですね。なかなかうまく海に一行が向かってくれないみたいで。」
 大人はよくわからないという結論に達したキルは一行の様子を覗き見た。