「こうも人数が多いと面倒ね…。射抜け、水球彗星(アクアコメット!)」
 セイのはらう扇から無数の球が飛びでると、撤退する一行の足元を射抜いていく。
ウェハースにだけは当たるよう調節しているが、
召喚獣が必死に避けているためほとんどダメージは受けていない。
「なんて強さなの?とにかく戦いやすいところに参りましょう!」
「これが一軍の力!?」
「ジュリアン、ネティベル!ひらけたぞ!」
 あそこだ!、とエリーが示すと広い場所へ急ぐ。
パシらは離れたところにいるため戦闘には加わっていないが、
それ以外の一行が森を抜けると海が広がっていた。
「海…この先に魔王のいるヌリカ大陸が!」
「兄ちゃん、消えた…。」
 目の前に広がる海にこの先ののことを思うチャーリーだが、
ベルフェゴの言葉にはっと振り返った。
まるで最後の一発とでも言うかのように、ついに召喚獣が消えたウェハースに、
巨大な水泡を食らわせた当の本人はまるで泡のように姿を消してしまっていた。
 離れた海岸から海へと入る小山ほどのドラゴンは疲れたとばかりに、
首を水面に置き眼を閉じる。
先ほどから念話を送っているのだが、ジキタリスは忙しいのかなんなのか出る様子は無い。
ドルイドンのお手並みでも見ようかしら、とセイは海にもぐった。
 
 
 
 ひとまず休もうと座る一行に別行動のパシらが加わり、ヘイラーの回復薬を飲む。
「未成年はこれがいいだろう。それ以外はこっちだ。」
 そういって振り分けられたものは片や青い色。片や緑色。
チャーリーは村の決まりで16歳に成人の儀を終えているため緑色の回復薬を受け取った。
消耗しているのはチャーリーとネティベル、エリーにポリッターの4人だ。
一気にあおった4人はそれぞれ微妙な顔となる。
「意外と甘い感じが…。あれ?師匠…じゃなくて先生達どうしたんですか?」
「大人用は苦いな…。」
「苦いって言うか…。プリースト先生のとはれるわ…。」
「ごめんなさい。なんていうか…ごめんなさい。」
 まずいという3人にポリッターだけはそうですか?と暢気に問う。
その様子にジミー、アイアン、ベルフェゴ、キャシー以外はあれ飲まなきゃだめなのかと、内心ため息をついた。
「そこの魔物は…これだな。」
 どうみても回復薬でない赤い見覚えのある果実を取り出したヘイラーに、
ネティベルらは正しい扱いね、と感心した。
見ただけで判断するヘイラーのドSっぷりに離れたところにいるセイも鼻で哂う。
 
「かっ!!!!辛っ!みっみず!!みっ水〜〜〜」
 水泡で伸びていたウェハースは口の放り込まれたそれに飛び起き、海の水を飲む。
が、やはり海は海。
当然塩辛く、ウェハースは悶絶した挙句木に頭をぶつけ眼を回した。
「唐辛子ぐらいでヒーヒー言うな。大の大人がだらしない。」
 半泣きするウェハースにヘイラーは楽しげに見下す。
「あ、あまりいじめるとかわいそうですよ。」
 チャーリーがとめるとヘイラーはわかったわかったといい、ウェハースから離れる。
 
 
「あ!みた!?!今そこにイルカさんがいた!!」
 キャシーの声に一同がなんだろうかと海に眼を向けた。
遠くでよく見えないが灰色のイルカが水しぶきを上げ泳いでいる。
「こっちおいてでよぉ〜〜。いるかさ〜ん。」
「あれはバンドウイルカっていうので…人懐っこい動物ですよ。」
「アキバハラではショーやってました!かわいい〜ですぅ。モエモエです。」
 かわいいというアイアンにポリッターは長々と説明し始めた。
まったく聞いていないアイアンの隣でジュリアンはかわいいと呼ぶが近づく様子は無い。
「魔物…じゃないのか?」
 どうなんだ?とベルフェゴを見るエリーだが遠すぎてわからないという。
「でもなんか変な感じ…。」
 眉を寄せるベルフェゴは眼を細めた。