水面下の襲撃

 


 急に向きを変えたイルカが接近してくるとその周辺があわ立っていることに気がついた。
青白い球が飛んでくるとベルフェゴはチャーリーに飛びつき、避ける。
「べっベルフェゴ!」
「電撃!?それじゃああのイルカは雷属性!?」
 うそでしょ?と雷魔法を準備していたネティベルは手を止め、
負傷したベルフェゴの治療に専念する。
「あのイルカさん悪い子ね!」
 矢をつがえるキャシーは土魔法を矢にまとわせはなつ。
もぐってしまったため命中したかわからない。
『雷球遊撃(ボールショー) 連打!』
 今度は5つの雷撃をまとった球が尾びれから打ち出され、一行の足元へと飛来する。
「キャシー!矢を絶やすな!ポリッター!土魔法を使うんだ!」
 氷の刃を作り出すエリーはそう指示を出した。
その指示にいち早く反応し、ポリッターは土魔法を唱えた。
「森のごとく立ち並ぶ岩岩。その鋭き切っ先の森を今ここに!中級土魔法:石林」
 地面から無数の岩を出すとジュリアンがもぎ取り、軽々と投げつけていく。
 
 
「化け物かよ!なんだよあの女。」
「あら?聞いてなかったの?一行の職業、ジキタリス様が言っておられたわよ。」
 岩を避けるドルイドンの言葉に、セイは自分に飛んできた岩を尾で弾き、
耐雷属性の結界を強める。
「キスケ様の話以外聞いてなかったなぁ。
 つうか…俺ジャポネーゼ語話せないんだが…。ガチで戦うのに名前は必要か?」
 巨大な岩にぎょっとするドルイドンは尾びれで粉砕するとさらにもぐり、
身体の回りに雷撃の球を無数に生み出した。
「まぁ…いいんじゃないの?どうせ名乗るといってもあなた苗字ないじゃない。」
「魔獣だからな。完璧な獣人になりゃいいが…。
 俺がイルカ獣人の始祖になるときはやっぱあれだな。ハイパーデリシャスなのを。」
「新しい獣人の名前は魔の神と魔王様、それに四天王長…
 今はジキタリス様の3名の話し合いにより決められる掟でしょう。
 勝手に付けられるものじゃないの。」
 飛んでくる岩石を鬱陶しそうにはらうと、驚いて魔法をくらうドルイドンを見た。
「知らなかったの!?」
「知るかぼけぇ!え…魔の神って実在したのか!?
 そもそも四天王長ってそんな重大な仕事あったのか!?」
「悪かったわね。ジキタリス様の悪口は許さないわ。
 まぁ魔王様が就いてから2・3ほどしかいないらしいから…
 まだジキタリス様は命名に参加しておられないわ。」
 無数の球を尾びれで打ち出し終えると知るかよ、と声をあげセイはため息をついた。
 
【あーーーーーーーーっ!!!!!!!!バカッバカッ自分!】
 急に聞こえる念話に飛び上がるセイとドルイドンの頭上に岩が当たる。
【どっどうしたんですか!?今戻ります!!】
 叫んだかと思えばすぐ音沙汰がなくなった四天王長にセイは慌てて渦を描き始めた。
急いで逃げるドルイドンに眼もくれず、渦の力を外へと押し出し、その水流に巨体を乗せる。
「あ〜あ…鱗はがれてるのに…。いっちゃった…。」