「さてと…。あぁ…そうだ。
人間の生活リズムに合わしていたからそろそろ眠いが…。
少し生活リズムを直すか。」
「そういえば朝起きて夜寝ていたのよね?
私達淫魔にとっては昼夜逆転してもよくあるから平気だけど…。
吸血鬼にとっては半日ずれているから大変だったのね。」
伸びをし、大あくびをするロードクロサイトにフローラはあららとため息をついた。
廊下にいた2人はどこかに行ったらしいが、
ローズにいたってはかなり不定期な時間に眠っている。
「ローズはなんだってあんな不定期な時間で元気なんだ…。」
「勇者時代からの慣れじゃないかしら?
ほら、あれでも真夜中に行動とかいろいろしていたって…
自分で言っていたの覚えてないの?」
どうやら休憩してから召喚獣を呼び出し、
海を渡ることにしたらしい一行に目を向けると手を払い、蝙蝠を消し去る。
フローラの言葉に何か考えるロードクロサイトだったが、
首を傾げるだけでさ〜?、と言う答えだけが返ってきた。
「まったく…。まぁ、自宅がわからず、
一週間も森の中さまよっていたような記憶力に聞くだけ無駄だったわね…。
そういえば方向音痴治ったのかしら?」
「人の幼少の黒歴史を思い出させるな。
あれは目印をキノコにしたのが間違いなだけで方向音痴ではない。」
むっと言い返すロードクロサイトに、やっぱりばかだわ、
と心の中で呟くフローラは大きなため息をひっそりと吐いた。
大きく伸びをし、立ち上がり、部屋を出るロードクロサイトにフローラも続く。
「そっちは…そちらは自室のある廊下じゃないと思いますが魔王様。」
「鍛錬所だ鍛錬所。しばらくまともに身体動かしてなかったからな…。」
久々に手合わせをしたい、という魔王にまた壁が壊れる、とフローラは内心大きく、
深くため息をついた。
よく仲のいい元宿敵同士の2人が使う鍛錬所は終わった後の修復が、
魔法では到底直せるような状況ではないのが常だ。
ただでさえこの天然が使っただけでほぼ全損するというのに。
普段から結界を張っている部屋に来ると開けようとしたところで、
2人顔を見合わせる。
「誰か使っているのか?」
「キルは実家に帰りましたし…。ジキタリスが使っているのではないでしょうか?」
中からする気配に扉を開くと赤い髪と青い髪が眼に入った。
「シィルーズの姿で何をしているんだ?」
「え!?魔王様!?セイ、ちょっとタンマ。」
「あら、魔王様。ドルイドンは先ほど治癒の間に着いたようです。
属性ダメージが大きいようでキスケ様が心配なされておりました。」
ロードクロサイトの言葉に訓練用の剣を下ろすシィルーズとセイは手を止め、
振り向いた。
それほど息を切らしていないことからまだはじめたばかりのようだが、
ここで打ち合いをしていたらしい。
「いえ、以前この姿で四天王長と名乗ったので、
戦闘開始前にこの姿で少し戦おうかと。
幸い?にも自由にこの姿になれるようになったのでついでに。
まだ身体の大きさなどの感覚が薄いので、セイに付き合ってもらっていたんです。」
着替えたのか、以前初めて出てきた時と同じ姿のシィルーズははねた髪を撫で付けた。
「でもジキタリス様は飲み込みが早いので。
攻撃系の私と違い、素早さが高いためになかなかうまく反応ができず、
すみません。」
「そんなことないって。あの一行、エリーとチャーリーぐらいしか素早さ高くないし、
攻撃力はチャーリーのほうが上だから。」
続けようか、と剣を構えるとほんの一呼吸、眼を閉じ息を吐く。
碧眼の眼を開くとセイの構えたすぐ目の前に瞬時に移動した。
すぐさまセイが鉄扇をはらうと、切り上げる剣とぶつかり一瞬力が拮抗する。
だがシィルーズはそのままの体制で身体をよじり、わき腹に向け蹴りを繰り出す。
セイもただ剣を押さえているだけではない。
剣を大きく外に払うとシィルーズの軸足を大きく払う。
足が払われ倒れる、とフローラは思うが、
セイの足が触れる時には既に間合いを開けていた。
セイが咄嗟にあげた鉄扇に、再び間合いをつめてきたシィルーズの斬激音が幾度となく鳴り響く。
攻撃力が低くとも何度も同じ力で当てられ、
セイの手から鉄扇が落ちるがセイの繰り出した回し蹴りに、
右手で押さえたシィルーズは互いに動きを止め、相手の動きを伺う。
「セイ、もう少し本気でやっても大丈夫だぞ?
ローズ…あぁその姿はシィルーズか。
意外と頑丈だしそのほうがやりやすいだろう。」
受け止めていた足を払い、肉弾戦になる2人に、
ロードクロサイトは用具置き場から長い棒を選び引き抜く。
修理頼まないと、というフローラはほどほどにしなさいとその場を立ち去っていった。
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