「それで…魔王様。何か用事があったのでは…。」
「あぁ。あの鍛錬所を破壊したのは私だけでなくローズも関わっているのに、
 私ばかり責められては不公平だと思ってな。」
 まだ濡れている髪をムーラたちが拭くのをやめさせ、
向き直るローズにロードクロサイトは腕を組み、仁王立ちする。
その頭を叩きたいフローラだが、部下の手前ぐっと堪える。
「不公平って…魔王様。
 お言葉ですが、おそらく破壊したのは魔王様じゃないでしょうか?
 僕の剣にはそこまで破壊力は…。」
「岩ぐらい破壊できるだろう。基本的城は岩で作られているんだしな。」
 技が当たっていたじゃないか、というロードクロサイトにフローラはため息を吐く。
「魔王様。ただの岩ではなく魔岩石です。
 ジキタリスの力では魔岩石はそう簡単に壊せません。」
 フローラは幼馴染のバカ力にまったくとため息を吐き、
どれくらい力の差があるのよ、と頭を抱えた。
「エクスカリバーならともかくですが、普通の剣では無理ですよ。」
「私だって持っていたのはただの杖だぞ。耐久力的にも攻撃力的にも同じだろう。」
 まったく、と言うローズにロードクロサイトはお前も反省しろと言う。
 
「はぁー…。あ、魔王様。あの一行はどうなりましたでしょうか?」
「一行は召喚獣にのって海を渡るみたいよ。
 ジキタリス、後でいろいろ話があるから屋敷にいってもいいかしら?」
 もういいやといわんばかりのため息を吐くローズにフローラが声をかけた。
「いいけど…いろいろフローラに聞きたいこともあるし。」
 ずっと座っていたローズは立ち上がり、ケアロスらに背を向ける。
が、その肩を強くつかまれ、いや〜〜な汗をかく。
 
 
「ジキタリス様、その前にそのお姿での身体検査と左腕の治療、
 受けてもらいますよ。」
「いや…せっかく着替えたんだし…。ね?ダメ?」
 言外に嫌だというローズは繰り返しダメ?と聞く。
ケアロスは急に笑顔になり、黒いオーラを出し始めた。
「いいんですよ。こちらは。一発で仕留めてさしあげますよ。」
「気絶させればいいのか?」
「魔王様は出てこないでいいの!!!あぁもう!絶対検診だけじゃ済まされなくなるのに!!」
 ぱき、と指を鳴らすケアロスにロードクロサイトが反応する。
すぐに気がつくローズだったが、体が反応するより先に首に手刀が入り、
そのまま気絶した。
「あぁまた…。首のほうも治療も同時に行います…。あぁもう。」
「そんなに強くやってないだろう。」
「まったく…。」
 本当にろくなことしない、とため息をつくフローラは
再びケアロスらに囲まれるローズを見るとその場を立ち去る。