「うっうん。兄ちゃん…今のあいつら…あの3人には気をつけて。」
「3人?さっきの2人とシィルーズのことかしら?」
気持ちを切り替えるネティベルだが、ベルフェゴは違うと首を振る。
「あ、ベルフェゴくんもきがついたぁ〜?ジミーくんもうちとおなじようにみえたって。」
「2人なのに3人…もしかして!ちょっと待ってください。確か図鑑に…。」
ねぇ〜というアイアンにポリッターは思いついたように図鑑をめくる。
「少し違うんですけども体がひとつで首が3つのヒドラと言う
ドラゴン系の魔物がいるそうです。ほら、ここに書いてあります!」
「よく覚えていたわね…。まぁそれぐらいできなきゃ蹴りだすわ。
そうねぇ他に該当しそうなものがいないから…でもよく気づいたわね…。
もう一人は見えないはずなのに…。」
やや興奮気味に話すポリッターにネティベルはやや感心したような口調になるが、
胸を張るポリッターをはたく。
「大叔父さんに気配を読む訓練を受けたから…。だから気が付いた…。」
「なるほど。…ここで考えても目立つ。中に入ろう。」
わずかに気まずそうないベルフェゴにエリーは頷くと、周囲に眼を配り一行を促す。
目に付いた宿へと入れば耳の長い亭主が一行を出迎えた。
「天性の勇者かい?銀月の勇者以来だなぁ。大部屋ならあいてるがそれでいいかい?」
珍しそうな亭主は一行の人数を見ると二部屋あるかな?と首をかしげる。
「大叔父さんを知ってるんですか!?」
「親族かい?あぁそうかもうそんなに経つのか…。そんじゃあこっちにきなよ。」
目の前の魔物が勇者一行を知っているのかと驚くチャーリーに、
亭主は早いものだと1人頷き、一行に部屋を案内する。
「あの方の親族となれば下手な部屋には案内できないからなぁ。
この部屋でいいかい?ちょっと埃っぽいかぁ…窓を開ければ大丈夫だと思うけど。」
大部屋に案内された一行は窓を開ける亭主をまじまじと見る。
風になびいて見える長い耳は明らかに人間ではない。
「貴方は…。」
「私は見ての通り淫魔だよ。そうだ。勇者はそこの君だろう?
称号…あ、サガね。性はなんだい?」
埃大丈夫かなと言う亭主にジュリアンが声をかけると、長い耳を見せながら淫魔だよと言う。
そうだと手を叩くとチャーリーになんだい?と問いかけた。
「え?えぇっと…なんでしょうかそれ…。」
「ん?あれ?天界にいって聞かなかったのかい?
銀月の勇者一行の曽祖父は“幸運”だったし…えぇっと神託の勇者はたしか…
“信頼”だったかな?あれ?“仲間”だっけかな?
とにかく勇者が生まれ持った…力?見たいなのさ。
神託の勇者は印を受けたときの力だったと思うけど。」
聴きなれない言葉に聞きかえすチャーリだったが、
亭主は驚いたように目を瞬かせた。
ポリッターは持っている図鑑を見るが当然載っているはずもなく、
エリー達も首をかしげている。
「あ!そういえばそんな話をしていただきましたが…たしか…えぇっと…。」
「兄ちゃんは確か“絆”だったと思う。大叔父さんのは分かるのか?」
いろいろ聞きすぎてと考えるチャーリーにベルフェゴが答える。
ベルフェゴの言葉に亭主はもちろん、とふんわり笑った。
「だけどいえないんだ。言ったとなればあの方の激怒をくらうからな。
言えるのは最も強くて弱い感情ってとこかな?
宿は自由に使ってかまわないよ。いつ出てもいいし、勝手に泊まってもいい。
この部屋はもともと勇者一行しか泊めないんだからだれも咎めはしないさ。
とりあえず、夕食は一階で取ってくれよ。
この人数でここまで運ぶのは力の弱い淫魔の俺じゃあちと厳しいからな。」
首をかしげるチャーリーらに亭主は笑うと、夕食の仕込をしなきゃと掻き消えるように姿を消した。
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