突然手を叩かれたエリーは目の前をさえぎる生垣を睨む。
足元には氷の礫。
これが当たったのかと踏み潰すと仕方なく迂回する道を探る。
「それにして霧が濃いな…。嫌なことばかり頭をよぎる…。」
 霧はじめじめとした感触はなく、足元でひらひらとするコートは湿気ってない。
いつでも戦えるよう短剣を片手に取ると気配を探りながら慎重に行動する。
今大型の魔物に襲われてはかなり消耗してしまう。
「あの馬鹿らを早く見つけないと…。!!」
 突然の気配に身構えるエリーの目の前で生垣が破壊された。
斬りかかろうとした所で気が付いたエリーはジュリアンの拳をかわし、
落ち着けと小さな水泡を顔に投げる。
「あれ?エリー!チャーリー君と手を繋いでいたんだけど引っ張られてここに…。」
「壁を破壊して来たと言うわけか…。爆裂の属性はだてじゃないな。」
 迷路を完全に無視しているな、と呆れるエリーはジュリアンを見てはっと目を見開いた。
 
 
 真っ白な霧にこれが綿あめであったら、
と考えるベルフェゴは不意に感じる気配に顔をこわばらせる。
震える足が止まらない。
「そっそこに誰が…。」
 感じる気配は知っているもの。
何がいるのかを分かってしまったベルフェゴは震えながら霧に徐々に現れた“人”を見つめた。
「フローラの霧は本当にうまい具合にできてるよ…。」
 “現れた人”はニヤリと笑い、長い犬歯を見せる。
「君には釘を刺しておかないとね…。」
「言うつもりもないし、すっすぐ皆気づく!」
 優しい口調で言うのに対し、ベルフェゴは言葉を搾り出した。
その言葉に満足したのか約束だよ、と言い残し霧の中へと吸い込まれるように消えていく。
 当てられていた魔力が消え、膝をつくベルフェゴは息を整え大きく息を吸いこんだ。