ベルフェゴは微妙に感じる無数の小動物…蝙蝠に目をやると黙々と歩き続けた。
あの向こうで監視しているに違いない、とそう確信しているがむやみに手を出せない。
「あー!!!ベルフェゴ君だ!!」
「キャッキャシーさんそんなに引っ張らなくても…。
ベルフェゴ君無事だったんだね!」
突然背後から声をかけられ、ベルフェゴは驚いたように振り向いた。
どうやらいろいろ複雑な構造になっているらしい迷路で気配が感じられなかったらしい。
「さっきポリッター君が唱えた爆裂呪文で生垣飛ばしたらね!
霧が少しの間だけ消えたの!」
「どうも水呪文と風呪文の複合魔法のようですよ!
爆風で霧が飛んで道が出来ましたから!」
目を輝かせるポリッターと嬉しそうにはしゃぐキャシーに、
ベルフェゴは目をしばたかせた。
どうもこの元気200%な二人の勢いに飲み込まれてしまう。
「そっそう…。それじゃあもしかしてうまく使えば兄ちゃんたちとも
すぐ合流できるかもしれない…。ジェリー、この道を吹き飛ばしてみて。」
「そうですよね!この前の生垣ですか?ちょっと待ってください。
中位爆裂魔法:爆砕!」
ベルフェゴの示した場所に向かって魔法を放ったポリッターは
霧が飛んだ空間を見ると満足げに頷いた。
「さっきまで完全に壁だったのに…霧だったのか。
でも一応本物の生垣もあるんだな。」
閉じる前にと霧の穴を3人はくぐると霧がないのにある壁に手を触れた。
霧で覆い隠し、幻術でもって自由に組み替える。それがこの霧の迷宮だ。
「でもこれを連発したら疲れるのでそうそう使えないんです…。」
「本物の生垣に当てても無効みたいだ。
出来る限り温存しながら進んだほうがいいと思う。」
「あたしもそれがいいと思う!あ!そうだ!!
あたしの弓でも技を使えば吹き飛ぶかも!」
連発で疲れたのかため息をつくポリッターに、
塞がった霧の壁を調べるベルフェゴはどの壁が怪しいか辺りを見回した。
そうだ、と弓をつがえたキャシーは矢に岩をまとわせ勢いよく放つ。
「あれ!?やっぱりだめなのかな!?!」
ほんのわずかに霧が散るがすぐに元に戻り、壁に当たったように矢が落ちる。
その様子を見ていたポリッターはそうだとばかりに壁に手を当てた。
「爆裂魔法のみが効く…あ!複合呪文じゃなくて普通に氷結呪文じゃないですか!?
もしかしたら炎でも。」
詠唱なしの下級魔法をぶつけるポリッターだったが、
勢いがない下級呪文では吹き飛ばせない。
「炎でも勢いで風が同時に起きないとだめらしい…。」
「温存したほうがいいって師匠…先生が言っていたので早々使っていられませんし…。」
「のんびり、勘で行けば平気よ!!」
冷静に考えるベルフェゴにそうですねぇ、と考えるポリッター。
そこに声をかぶさるようにして大声明るくキャシーは大丈夫よ!と励ました。
ぱっと明るくなったポリッターはそれもそうですね!
と元気よく答え、ベルフェゴを振り向く。
どうしてこうも明るいのかと呆れるベルフェゴだが、適当にあわせて笑った。
正直、この二人のペースに合わせていれば無理に鍛えなくても
痩せられたのではないかとふと思ってみたりする。
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