角を曲がったところで何かにぶつかったベルフェゴは同じように転んだ影に目を向けた。
向こうも驚いたのか目を瞬かせ、その後ろに居る女性があら、と声を出した。
「ベルフェゴ!キャシーさんにポリッター君!みんな無事だったんですね!」
 チャーリーの声に未成年3人組はほっとしたように顔を明るくする。
「師…先生!爆裂魔法がとっても役に立ちました!」
「むやみに唱えてないでしょうね?キャシー、お疲れ様。」
 幾分かほっとした様子のネティベルは、目を輝かせる弟子の頭を軽く叩き、
その後ろに居た少女に声をかける。
少女と呼ぶには違和感があるが、はいっ!と元気な声で返事した。
「あとは…エリーさんとジュリアンさんと、アイアンさんとジミーさんと、
 ウェハースさんですね…。早く合流できればいいのですけど。」
「そうね…。」  ネティベルは離れないようにと、植物束縛魔法であるヘデラを唱え、全員の手を繋ぐ。
 
 
 歩き出したチャーリーたちだったが、ベルフェゴの足が止まったことに振り向く。
「ベルフェゴ、どうしたの?」
「なにか今音が…。」
 ベルフェゴの向く方向をみるが霧が立ちこめ、まったく先が見えない。
首をかしげる一行だったが、キャシーもあ、と声を上げた。
「本当だ!何がどーんって音が聞こえる!!」
「どーん?なにか危険な魔物でも暴れているのかしら?」
「来る!」
 眉を寄せるネティベルだったが、ベルフェゴの言葉に素早く臨戦態勢をとる。
次第にチャーリーたちにも音が聞こえるようになり、
いつでも撃退できるよう剣に力を込め、キャシーは弓を構えた。
 
「道ふさいでんじゃねぇよ!」
 ドスの利いた声が響き、生垣が吹き飛ぶ。
「あ!!!!!ネティー!!!!」
 とっさに呪文を唱えようとしていたネティベルは突然の明るい声に魔法を四散させる。
誰か…エリーを抱えたジュリアンは顔を輝かせ、ネティベルへと接近した。
「エリーが私をかばって怪我を!」
「エリー!?これは手ひどくやられたわね…。大丈夫?」
「しくじった…。四天王戦にはでれなそうだ。すまない。」
 下ろされたエリーに慌ててネティベルが怪我の具合を見るが、
エリーは戦闘できそうにないと首を振る。
「そうね…。今は服の上から応急処置をしておくわ。
 宿に戻ったら直ぐ治療するから待ってて。」
 いい?と包帯を取り出すと回復呪文を唱えながらきつく巻いていく。
 
 
「ネティベルさん、服の上からより直接巻いたほうがいいんじゃないんですか?」
 驚いたチャーリーだったが、エリーに睨まれ、え?と首をかしげた。
「良いのよ。これで。あとでちゃんと治療するから。」
「色々事情があるんだ。気にするな。」
 治療を受け、いつもの黒服に白い包帯が目立つエリーはジュリアンの肩を借りて立ち上がる。
「あれ〜?みんないたー。」
「―――。――。―――。」
 のんきな声が聞こえ、アイアンとジミーが霧の中から姿を現した。
「あれ?エリー、けがしたの?」
「あぁ。だから私に話しかけるな。」
 首をかしげるアイアンにエリーは面倒くさ気に言う。
「で、あれは…。」
 姿の見えない魔剣士にベルフェゴはつぶやくが気配は感じられない。
まぁいいかと特に気にしていないような兄の姿にそのまま歩き出す。
 
 道中なにかへんな塊を見た気がしたが、そのまま気にせず先に進…
「いたっ!」
 思わず驚くベルフェゴの言葉に変な塊が叫びながら跳ね起きる。
「こんな所にいたんですか。大丈夫ですか?」
 駆け寄るチャーリーにウェハースはよろよろと立ち上がった。
「あっあれ?こっここは…。」
 きょろきょろと辺りを見回すウェハースにネティベルらはやれやれとため息をついた。