「こんな奴でも拾ってくれて嬉しいよ。ユー、紹介してやんなきゃ。」
ユーといわれた女性は背負っていた赤ん坊を差し出す。
陰に隠れていたであろう2人の娘も顔を覗かせた。
「娘のレインリリーとネリネ。それとこの子は今年の春生まれたの。名前はおにいちゃんの名前を取ってローズっていうのよ。きっとお兄ちゃんみたいに優しくて強い子に育ってくれると思うの。お兄ちゃんみたいに正義感のある…素敵な戦士になってくれるわ。」
ぐさりと笑顔で悪気のない妹の言葉がローズに突き刺さった。
現在の職:魔王軍四天王長
「そっそっか。印は?」
「でなかった。けど曾お祖父ちゃんも勇者だったんだからきっとまた出るかもしれないわ。」
「曾祖父も勇者だったのか?」
意外そうにいうロードクロサイトにポウェルズ夫妻は頷く。
「運がすっごく良くって、ボロボロになりながら帰ってきた後、
いろいろと幸運続きだったみたいだし。」
(あぁ、あの最後には運に見放されていたあれか。)
みょ〜に印象に残っているあのあっけなさ過ぎる勇者一行。
運のみできたと思われる一行…。まさかローズの曽祖父だったとは…とロードクロサイトは思った。
神は一体何を考えているのだろうか…。
「それはともかく、急いでご飯作るから上がってよ。お母さんとお父さんにも会わせたいし。」
「そうだね。シルフ様、どうぞ入ってください♪」
両親との対面により、どうやらローズの髪は父親譲りと言うことがわかり、
母親は普通の村娘だが、どこかあの運だけ強い勇者に似ているところがあった。
「お兄ちゃん、これからもずっとここにいるよね?」
期待に満ちた目で4人に見つめられ、ローズは言葉に詰まった。
何とか気まずそうに咳払いをし、明日には発つ事を伝える。
「シルフ様達と行動するから…もう帰ってこない可能性もある…。」
「そんな!!」
「そんな事言わずに、年に一回でいいから帰ってきなさいよ。」
「お前さんには家を継いでもらわないといけないしな。」
妹・母・父に反対され、ローズはため息をついた。
「でもねぇ…。」
「それに、お前さんの帰りを待っていた子だっているんだ。お前さんもいい年だろ。
そろそろ腰をすえなさい。」
今現在も戸の向こうには2・3人の女性がローズのことを熱い視線で見守っていた。
そんな視線に気がついていないのかどうなのか、途端にローズは目を輝かした。
「いやだなぁ父さん。僕にだってこの世で一番大切な人ぐらいいますよ〜ww」
その変わりように家族は一瞬言葉を失ったが、すぐさま気を取り直す。
「なっなんか変わったなぁ。それで?どんなひとなんだ?もしかしてプリースト?」
僧侶であった女性のことを言うが彼はぜんぜん違うよ〜と否定した。
「もっと素敵で強くて美しくて。ちょっと天ボケででもとっても可愛くて…。あ、一応年上だよ。
何時でもお傍にいたくてww」
「…そんなの身近にいたか?…フローラとか?」
身近にいる人…フローラ以外女性はいない。
一応お付きの獣人がいるがローズの周りにいるのは皆ローズより年下か同年代だ。
だが、フローラの名を耳に下途端ローズは勢いよく首を横に振った。
「まさか!そんなわけないですよ!ありえないありえない。」
しっかりとロードクロサイトの手を掴み、全力で否定する。
「…まさか…おにいちゃん…。」
「お前…いつから…。」
不自然なほど至近距離でロードクロサイトを見つめ、否定する兄の姿に妹夫婦と両親は真意に気付いた…。気付かないのは本人のみらしい。
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