「ドゥリーミー様を倒したということはまぁ強いのかね?」
「デモ一行ノ人数大分減ッテルヨ。」
 城の正門のように見上げるほど大きな扉の前、2人の少年の姿を見た一行は足を止めた。
あのモスペカズで出会った4軍のヒュドラ。
以前はどこにでもいそうな少年の服装だったが、
今はアナンタと名乗った少年は肩の無い胴着に身を包み、
イルヤンと名乗った少年は魔道師のような姿をしている。
「さぁてと俺達が4軍四天王を倒した際に奪える証を持っている。」
「ソレダト人間ニハ何十年カカッテモ無理。ダカラ4時間。
 僕達ト戦ッテ生キテイタラアゲル。」
「4軍一番隊…幻映隊隊長ヒュドラ=ケツァルカトル=アナンタ」
「同ジク、イルヤン。カカッテ来イ。勇者一行。」
 いつでも戦えるよう臨戦態勢をとる2人にネティベルとポリッターはすばやく補助呪文を唱える。
剣を構えるチャーリーにアナンタは素手で飛び込み、刀を無造作につかむ。
「甘いよがきんちょ。もち手が緩々だね。」
 いとも簡単にチャーリーから刀を奪い、それを放り投げる。
驚いたチャーリーだったが、右から襲い掛かる足を止め、
刀を拾うべく姿勢を低くした。
アナンタもそれをとめよう動きかけ、矢を放つキャシーの懐に滑り込む。
はらおうとするキャシーの鳩尾に拳を入れると自分の倍はあるキャシーを高く飛ばした。
「補助系水魔法 水泡!」
あわてて水泡を出しキャシーのクッションを作るポリッターだったが
雷撃が飛んでくるのを目に入れ、あわてて地面に伏せる。
放ったほうを見ればあの少女のような少年のようないでたちをいたイルヤンだ。
一応彼、とポリッターは見るが詠唱が聞こえなかった。
 
 再び雷撃が聞こえ、飛びのくとなぜか地面が凍っている。
「ポリッター!それは雷撃に見せかけた氷呪文よ!」
「ウン。雷撃ハアノ人ノヲ見タラ自分ノガイカニ未完成カカワッタカラ使ワナイ。」
 あっさりと肯定するイルヤンはそのまま第3波を指先から放つ。
それも一本ではなく、五本から光が放たれ、竜のようにうねりながら各方面に飛んでいく。
「火炎車!」
 ネティベルの放った魔法により四本掻き消えるが、残りの一本が見当たらない。
「師匠!!」
 ポリッターの切羽詰った声に前転するネティベルの頭上を氷の龍が掠め飛ぶ。
「雪花−乱舞」
「上級氷魔法!?」
 呟くように唱えられた呪文にポリッターは炎の壁を作るが四方から襲い掛かる白い花弁をとめることが出来ない。
「っ!!」
 背後から襲い掛かってくる花弁がポリッターの背にあたり、
ポリッターは慌てて炎の壁をかき消し、そのまま前に転がる。
 
 
「ポリッター君!!」
「お前はこっちだよ!」
 チャーリーは刀を拾うと同時に振り向き、アナンタの爪を止めた。
『アナンタ、熱クナルト手加減忘レルカラ気ヲ付ケテ』
『わ〜〜ってるって。いや〜〜〜骨がなくってびっくりだよ。』
 イングリッシウ語で話す2人は見合うとにやりと笑う。
そのようすに言葉はわからないが何かいやな雰囲気を感じた一行は目配せをした。
「ジミーはアイアンと召喚獣を!」
「わかってるけどジミーくん、きもちがわるくってつよいのがだせないって。
 だいじょうぶぅ?」
 ネティベルの指示にアイアンは首を振り、かがみこむジミーを覗き込む。
苦しそうな様子のジミーにこれ以上の戦闘は離脱させたほうが…と考えるネティベルだったが、
ジミーの背後に現れた黒い塊に気がついた。
塊からいびつな形の黒い手が現れたかと思うとジミーの呼吸は収まり、
首をかしげながら立ち上がる。
ジミーが振り向いたときには塊は消えていた。
 
『やっぱ連戦だと口数も少なきゃ手数も少ないか。本気であいつ出すの?』
 詠唱を始めた召喚術士をみるとアナンタはイルヤンの傍に戻ってくるなり眉を寄せた。
『約束ハ約束。アレガドレダケ変態デ、ドウシヨウモナクテモ仕方ナイヨ。』
 ポリッターの放つ魔法にイルヤンは前に出ると片腕で受け、かき消す。
そこにチャーリーの斬激が飛んでくるが、今度はアナンタが素手で受け止め、かき消した。
「魔法が効かない!?」
 あせるポリッターにネティベルは静かに考える。
何かを思いついたネティベルはベルフェゴに耳打ちするとベルフェゴは緊張したようにゆっくりと頷いた。