「祖父ソーズマン直伝。雷撃剣 雷切鎌鼬!」
 チャーリーの放つ斬激は雷撃を纏い、鎌鼬は牙をむいて相手へ襲い掛かる。
よける2人だったがアナンタは雷撃のダメージを。
イルヤンは斬激のダメージを受け二手に分かれた。
その様子に確信を得たネティベルはポリッターと共に呪文を唱える。
「広がり、満ちたるその道しるべを渡り全てを破壊し尽くせ!結界系 爆裂魔法 粉塵爆発!」
「乱れ咲きの花 一度吹けば吹雪となる花弁よ その美しき姿と無数をもって切り刻め!上級植物魔法 百花繚乱!」
 ポリッターの呪文がネティベルの唱えられた花弁に燃え移り、結界を大きくする。
アナンタは周囲を囲う結界に気がつくがよけきれず、結界が閉じたと同時に起きる爆撃に大きく跳ね飛ばされた。
 
「アナンタ!!」
 駆け寄ろうとするイルヤンにキャシーの矢が狙いを定め、足元を狙うために逆に遠ざかってしまう。
「真円ナルソノ完全ナ形ヲ持ッテ力ヲ写シ、跳ネ返セ。補助系土魔法 石鏡!」
 自分に補助魔法をかけるイルヤンはキャシーの矢を跳ね返し、アナンタのそばへと駆け寄った。
「祖父ソーズマン流豪風剣 猛虎、双牙!」
 迷路の死角から飛び出すベルフェゴの長さの違う2本の刀が頭上から襲い掛かり、
イルヤンは慌てて避けるが脇差と長刀の違いに避けきれずまともに技を食らってしまった。
 
「イルヤン!くっそ!!」
 瓦礫からようやく起き上がったアナンタは、技の余韻で一瞬動きが鈍る
ベルフェゴに蹴りを入れ吹き飛ばすとイルヤンの傍に駆け寄った。
そこへ大きな炎を纏った鳥の召喚鳥が現れ、アナンタの体を焼く。
滑り込むようにイルヤンの手をとると2人は光に包まれ、ひとつの塊となった。
 
 
 吹き飛ばされたベルフェゴに回復魔法を当てるネティベルはその塊に目をむけ、
結界を張るため魔力をためた。
光が収まるにつれ現れたのは、しなをつくり口元に布を当て微笑む女性…
いやどうみても男にしか見えない長髪の男であった。
一行で最も背の高く、2メートル近いキャシーほどの身長は
きわどい所しか隠していないような服を纏い、
ふわふわと浮く布をショールのように巻きつけていた。
ゆるく編んだ深い緑の髪は腰辺りまでと長く、
化粧をしているように見える顔の額には紫色の宝石が輝く。
 
「改めましテ。あたいは4軍一番隊幻映隊隊長ヒュドラ=ケツァルカトル=ユルング。
 楽しませて頂戴いお・ね・が・イw」
 妙に高いような低いような声で話すユルングはチャーリーに目を留めるとウィンクをして見せた。
ぞわりと悪寒がはしるチャーリーに、回復魔法でダメージの和らいだベルフェゴはユルングをにらみつける。
ネティベルはエリーに見せたかったときの反応が気になるわ、とあきれた様に見つめていた。
「そうそウ。あたいってばついつい調子に乗っちゃうから
 あたいの時は1時間だけって言われてるのよネ。
 だから一時間のうちにあたいに飛びっきりのプレゼント頂戴。」
 ンフ、と笑うユルングにこの場にいる一行と、こっそり見ている全員の背筋が嫌悪感に震える。
 
 
遠く離れてしまったエリーもまた背後からのいやな…生理的に受け付けない気配に背筋を震わせ、後で詳しく聞くかと、ジュリアンと共に城を出た。
 
「それにしても…やっぱりあの小動物ほどあたい好みの子はいないのネ。残念。」
 その言葉に資料を読んでいた四天王長はくしゃみをし、
ちらりと蝙蝠の写す戦闘に目を留め、嫌悪感丸出しの顔で小さく舌打ちをした。
 
 さぁかかってらっしゃイ、という言葉にとりあえず嫌悪感を抑える一行はどこから行けばと身構えた。
「祖父ソーズマン直伝。疾風剣 風鎌鼬!」
 チャーリーの放つ攻撃を優雅な動きで避けると肩の布をはずす。
どうみても筋肉が目立つ男性的な肩を露出させた姿だけでも
十分ダメージになりうるがベルフェゴは以前の自分に比べればとぶつぶつ呟いた。
ふわふわと宙に浮く布をユルングが振るえばチャーリーの放った鎌鼬を捕まえ、
それをチャーリーに返す。
刀で受け止めるチャーリーは何とか打ち消すと直接斬りかかった。
「浮いた!?」
 ふわりと宙に浮くユルングに驚くと急に降りてきたユルングの攻撃を刀で受け止めた。
もともと長身ということもあり、重量級であることを想定していたが
予想以上の重さに足がくじけそうになる。
「貴方かわいい顔してるじゃないノ。ん〜もう少し生意気さがあったら食べちゃうんだけどネw」