「やっと終わったー!」
大きく伸びをし、蝙蝠をマントの中へとしまうと貧血で倒れているローズの頭を叩く。
「魔王様…最近貧血が酷いのですが…。」
立ち上がるローズはフローラから支給されている増血剤を飲むとずきずきとする頭を振り、
地面に座り込む。
あぁ、と肩を貸すロードクロサイトだが身長差が大きく、
ほとんど小脇に抱える状態になってしまった。
「まだ体に力が入らないのか?」
「当たり前です!!…魔王様?降ろしてくれませんか?
気分がよくなったら自分で歩いて屋敷に戻りますから。」
だらりとするローズにロードクロサイトはそのまま廊下に出るとローズを肩に抱えなおし、そのまま歩き出す。
「頭に血が行き届いているだろう?
ケアロスらに見つかったときに顔色が青いと血を飲んだのがばれて怒られるからな。」
「何をわけのわからないことを…。不自然に顔が赤くなってすぐばれますから!」
反動をつけるローズはロードクロサイトの手から滑り降り、
ふらりとする足を踏ん張り魔王の後ろに立った。
振り返ったロードクロサイトに襟首を掴まれそうになるのをかわし、
血が上って赤くなった顔をそのままににらみつける。
「大丈夫そうだな。でだ。町に行くから付き合え。」
「はい!?何でまた…。」
いきなりの言葉に背を向けるロードクロサイトにローズは慌ててついていく。
「いや、あの口うるさいのと親父を見たと町に飛ばしている監視用の蝙蝠に
連絡が入ったんだ。しょうもないことをする前に今勇者一行と交戦中だから
来るなと追い払おうかと思ってな。」
ロードクロサイトの言葉にローズは大きくため息をつきかけ、飲み込む。
息子の口からいわなければ魔王城に来そうな2人が今滞在されると
さまざまめんどくさいというかややこしい。
どういうわけか2軍の情報網に引っかかりにくい2人はいつの間に地上にいったんだか、
とローズは頭を抱える。
ロードクロサイトは母エメラルダに年齢をごまかされていたが、
実際の年齢は噂によればとんでもなく高齢だとか。
現在5人いる吸血鬼の“始祖”じゃないかなんて噂もある。
「何で僕を連れて行くんですか。」
「一人で町に行ってもつまらないだろうが。」
体がだるいのをこらえ、まっすぐ歩くローズは話を聞かずに帰ればよかったとうなだれた。
「でも僕はあの一行に見つかると厄介ごとが増えそうな気がするので行かないほうが…。」
前を歩くロードクロサイトに下を向いたままいうと
立ち止まったロードクロサイトにぶつかり、振り向いた目と目が合う。
「それもそうか。んじゃあシィルーズになっていけばいいだろ。」
少なくともローズの姿じゃなければ連中は寄って来ない、
というロードクロサイトにローズはつっこむ事を放棄し、
屋敷に帰ろうと光から光へと移動する光魔法の移動をしようと窓に向かう。
「別に町に行くだけだろうが。少なくとも親父には血を吸われずにすむぞ。」
「だから貧血だから吸わないよう言ってくださいよ!!!止めてくださいよ!」
一行の戦闘が終わり日が昇る明けの空にロードクロサイトは
蝙蝠を飛ばしカーテンを閉めさせる。
遠くの方では付き猫達が魔王の活動範囲内のカーテンを閉めたり
ごく一部だけ日が入るように調節する姿が見え、吸血鬼らの活動時間外であることを知らせる。
ローズの言葉にそういえば何度か暇だから間食的な意味合いで
近くにいたローズの血を吸っていた、とローズの体調をいまさらになって気がつく吸血鬼。
「具合大丈夫か?」
「だから気分が悪いってさっきから言ってるじゃないですか!!
このまま話していても埒が明きません…。
明日曇りでしたら昼過ぎからエメラルダ様らの捜索を手伝いますから今日はもう帰ります!
いいですね!!」
ロードクロサイトの言葉に怒ったローズはそういい残すと
カーテンの隙間から光となって消え、屋敷へと帰っていった。
今日はもう疲れたし寝るか、とロードクロサイトも自室へと帰っていった。
主が部屋に入ると先ほど閉めたカーテンをすべて開け、付き猫達が活動を開始する。
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