数日後。先に戻ったロードクロサイトに早く追いつくため、
人間らに余計な詮索をされないように後片付けをする。
ふと、岩場の下…森がにわかに騒がしくなってきた。
人間でも来たのだろうかと、ローズは戦闘準備をする部下を制し駆けつける。
「あ…。」
「ローズ!!!」
ローズを出迎えたのはかつての仲間である4人と妹。
と、怒りを含めた怒鳴り声。
今日巻いているバンダナはいつもよりも遊びが長い。
それがふわりと風に揺れ、ローズは尖った耳をかく。
「やっぱ言っといた方が良かったかなぁ〜。それで…愚問だけどどうしたの?」
「やはり…その耳…。一体どういうことだローズ!!」
「そうです!大体貴方から感じられる気…それは魔界人のものでしょう!」
杖を構え叫ぶように問うウィザードと矢筒に手を回したアーチャーの指摘。
「あぁ、そこか。うん。ジョブチェンジした。」
「なぜ…魔王ローキに洗脳されたのですか!!」
プリーストの言葉にローズはこれ以上ないと言うほどにっこりと微笑む。
「洗脳なんてされてないよ。ただ魔王様に一心に愛しているだけだよ。」
そこまで言って恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「うわ〜言っちゃった言っちゃった。魔王様に僕の想いが通じればいいんだけどなぁ〜。」
「ローズ…まさか…そんな馬鹿な…。あの神具を使ったのか!?そんなばかげた事のために…。」
ソーズマンがそう叫ぶとにこやかな顔をしていたローズの目がすっと細まる。
「ばかげた事?僕の想いがばかげてるって?」
「そうだ!!馬鹿げている!!大体お前は…ぐっ」
静かな声のローズに声を荒げるファイター。だが、言い終わらぬうちに弾き飛ばされる。
キンっと甲高い音が響き、ローズは剣を納めた。
「ただの衝撃派だから。まぁファイターだし大丈夫でしょ。それより…僕…自分の考えとか否定されるの大嫌いなの…忘れたの?」
『ジキタリス様、今の音は一体!?』
派手に木が倒れた事もあってか、ハナモモと言う名の魔界人がローズのすぐ後ろに飛び出してくる。
『ハナモモ!?危ないから下がってて。これは僕に関係していることだから。』
『しかし…。』
『いい子だから…ね。かわりにホースディール呼んで来て。あんま戦う気分じゃないからさ。』
ハナモモは迷うようにローズと武器を構える人間達を見たがすぐさま身を翻し、四天王の参謀を呼びに行く。
ローズが再び剣を走らせるとハナモモに向かっていた矢が跡形もなく砕け散った。
「ハナモモいい子でしょ。僕のお気に入りw犬人種族のなかでも少しかわっていてさ、
感情が高ぶると全身赤く染まるんだww魔王様も好きだけどハナモモも僕は好きだな。」
2度目の衝撃波がアーチャーの持つ弓に当たる。
さすがに女性には直接攻撃は加えないらしい。
「ローズ…。お前一体…。」
「僕?ジキタリス=サルビア=チューベローズ。サルビアはちょうど種族変えたときに最初にみた花。今の僕の職業は魔王軍四天王長魔剣士。魔王様の右腕ということになるかな。それに・・僕は察しの通り半吸血鬼。」
にっこりと微笑む彼の口から長い犬歯がこぼれる。
じりっと剣を構えるソーズマン。
「あぁ、ちなみにいうと半淫魔…インキュバスでもあるんだ。
多分神様が怒ったのかなぁ〜。と思うんだけどね。あんまり女性は好みじゃあないんだけどね…。ま、僕の場合魔王様を除いてどんなものだって…ね。」
「お兄ちゃん!!!どうして…どうしてなのよ!!」
にやりとローズは不敵に笑い、口元を歪ませる。
今までみたことのない兄の表情にユーチャリスが叫ぶ。
|