体に緊張が走るジミーとジュリアンに、平常運転なアイアン。
意を決したかのように一人頷くネティベルは強く拳を握った。
「しかたないわ…。チャーリー。明日2軍に行くわよ。大丈夫。
 幸い、体以外は平気だし魔力もまだまだあるわ。十分サポートは出来る。」
 握った拳に魔力を集めるネティベルはこれなら、とチャーリーを見つめ、
行きましょうと繰り返す。
「ネティベル!それは危険だ!今の状態をわかっているのか?」
 ぎょっとしたように首を振るエリーは、ネティベルを押し止めるように肩を抑え、
首を振った。
 でも、というネティベルと駄目だというエリー。
一行で頼りになる2人の口論にベルフェゴは兄を不安げに見上げ、
ジュリアンは今にも平手打ちをしそうなエリーの腕を押さえ、
ジミーをアイアンは静かに事の成り行きを見つめる。
 
「落ち着いてください!!」
 部屋に響き渡る声にようやく口論を止めた2人はそれでもまだ睨み合い、
ばちばちと火花を散らす。
「先生もエリーさんもお願いですから…。
 チャーリーさん、ぎりぎりまで待ってもらっても良いですか?」
 その間に割って入ったのはネティベルの弟子、ポリッターだ。
起き上がりたいネティベルを抑え、チャーリーに待ってくれる様頼む。
「だっ大丈夫ですけど……。ネティベルさん、無理しないでください。
 エリーさんも心配してますし…。エリーさん、心配なのはわかりますが、
 暴力は駄目ですよ。」
「わかっている。すまなかったネティベル。」
「いいえ……私も焦っていたわ。ごめんなさいね。」
 チャーリーの言葉にようやく怒りを沈め、お互い謝る2人にほっと胸をなでおろした。
 
 
 ふと、エリーはまだ腕を掴んでいるジュリアンに目を留め、軽く眉を上げる。
その様子にはっと気がついたジュリアンは慌てて手を離し、頬を軽く染め顔を背ける。
 どうしたんだ?と首をかしげるエリーだが、そうだと思い出し躊躇いもなく腕輪に腕を通した。
「ネティベル。買い物に行くが……何か欲しいものあるか?ヘイラーも行くか?」
 回復薬をほとんど使い切ったんだと思い出すエリーは一行の荷物を確認し、
なくなった薬を目で確認した。
「いや、私はいい。それに私らの分の腕輪はないらしいし、
 余計な情報を言わなければ自由に出られるようだからな。
 自分らのだけで大丈夫だ。」
「そうね…いつもどおりのと、MPエイダー……出来ればMPエルダーのほうが良いかしら?」
 いらない、というヘイラーと頼むわね、というネティベル。
エイダーよりも回復効果の高いエルダーだが、
市場には余り出回らずこの町でも2つ手に入れるのがやっとであった。
 もっとも、町の人々はほとんど買う必要がないため、
彼らが消費しているのではなく単純に作るのに時間がかかっているらしい。
 
 
 大昔は全回復の薬もあったそうだが、宝箱などで偶然手に入れるなど以外では手に入らず、
精製方法はかのヴァッカーノ国の王立図書館にあるとか…。
 一応その薬かもしれないのはあるにはあったが、
埃をかぶっていたのと本当にその薬品かどうか汚れすぎて見えないのと、
で飲んでみたことはない。
 ファイナールポショルダーとかいう名前だとか何とか…。
 全樹の葉というのもあるらしいが、取れる場所が精霊剣マナの眠る大木、
という今まで誰が確認できたのだろうかと首をかしげる逸話ぐらいしかない。
 市販の回復薬は種類が少なく、それなりの効果だがあいにくネティベルもヘイラーも、
MP関係のものはエイダー以外精製できないのだった。
「わかった。探してみよう。それと…戻った後の話なんだが、
 キャシーが目を覚めしたら今後の作戦など少し話し合おう。
 このままの作戦では今後がきつい…。」
 残金は気にしていないエリーは肩をすくめて見せるとチャーリーに向き直る。
まだ眠ったままのキャシーにちらりと視線を送るエリーにチャーリーは頷き、
待っている間にも少し話し合ってみると返した。