一方。町に出て行ったエリーとジュリアンは祭り前で浮き足だつ町の中を、
出来るだけ大きそうな道具屋を探しながら歩いていた。
「エリーはどうして一行に入ったんです?」
 とことことエリーの少し早い歩調に合わせて歩くジュリアンは小首をかしげ、
下から見上げる。
 ふわりと香る花の匂いに、いいコロンの香りをつけていたんだ、と心のメモ帳にメモをとった。
「どうしてしてか…。そうだな。
 私はジョングオで偶然魔王を倒す一行の話を聞いていたのと、
 たまたま会ったネティベルらと意気投合してな。」
 ジョングオで結構仲間が増えたらしい、というエリーにジュリアンは少し顔を曇らせ、ひそかに眉を寄せる。
 
「エリーはネティーと仲…いいですよね。」
「歳が近いからな。なんか変だぞ?どうした?」
 思わず足が止まり、呟くジュリアンにエリーは首をかしげた。
一行の中で対等に話せるし、妙に女々しいところもないし、
女であることを知っているし、で何かと話しやすいネティベルは数少ない友人だ。
「ネティー…羨ましいです。」
 むっとしたままのジュリアンに眉を寄せるエリーはそうだ、と話をかえる。
「そういえばジュリアンは…確かジャポン国に入ってから、
 アキバハラというところを通った時に仲間になったんだったな。」
「おっ覚えてくれたんです!?うれしい…。
 じゃなくて…、はい!あの近くの町で育ちました。
 代々格闘家の家で、私だけがバーサーカーの能力を得ていたんです。
  友達にからかわれたことにかっとなった時、
 初めてバーサーカーだと知ったんですけども。
  家ではずっと胴着だったのが嫌で嫌で、それでアキバハラに出て喫茶店で
 働くことにしたんです。
 憧れのメイド服で女の子ばかりの仕事場で、とっても楽しかったんです。」
 
 確か、と仲間になった時を思い出すエリーにジュリアンは顔を赤らめ、わたわたと手を振った。
どうして仲間になったか、それを話す前に昔の話を始めたジュリアンにエリーは黙って耳を傾ける。
「でもある日。とっても行いの悪いお客様がいらっしゃるようになって……。
 私達のお尻触ったり、下から覗き込んだり。
 家まで追いかけられる被害もありました。
 一番仲のよかった子がその一番の被害者で、
 家でもお店でも安心できないほどで見ていられなくて。」
 うつむき、言いよどむジュリアンの頭に手をのせ、
軽くあやすように叩くとエリーはその言いよどんだ先を呟く。
「気がついたらその屑男を半殺しにしていた。ということか。」
 いつの間にか立ち止まっていたジュリアンはエリーの言葉に頷き、涙ぐむ目をぬぐった。
危ない能力ではあるが、実際それで助かったし、と心の中でつけたし落ち着くのを待った。
 
 
「さっさと買い物済ませよう。んで、余った金で寄り道しようか。」
「はっはい!!」
 こんなのが自分のお抱えメイドだったら結構楽しいかも、
と考えるエリーの後をジュリアンはうれしそうに付いていく。
ひそかに旅が終わった後の就職先が勝手に決められたとは知らないジュリアンと、
性別が間違えられているエリーは3件目にしてようやくMPエルダーを見つけ、
近くのベンチに座っていた。
「ようやく見つけたからいいとしても、普通の4倍の値段ってボッタクリもいいところです!」
 とりあえず必要なだけ買ったものの、のんびり優雅なティータイムと言うわけには行かず、
憤慨するジュリアン。
 宿に戻ればエリーの旅行袋の中にノーストラリアから出る際、
部屋から持ってきた装飾品やらがまだあるが、そろそろ換金しないと駄目だな、
とため息を吐く。
「まぁ少しだけでも休憩しよう。喉が渇いた。」
 立ち上がり、大通りから少し離れた店を示すエリーにジュリアンは顔を輝かせ、
喫茶店に足を踏み入れた。