「そうだ。たった今の今なんだが……。ネティベル。城にはやはりいけない。」
先ほどまであったことを一行に話さなくては、と一番焦っていたネティベルに先に伝え、
あの毒見で起きた事件をジュリアンと共に皆に伝える。
「どっ毒見!?大叔父さんが?なんで?」
一番驚いたのは噂でしか聞いていなかった銀月の勇者に憧れを持ち、
実際に出会った大叔父さんに複雑な心境のチャーリー。
「魔王が何かあったらと言うことだろう。
紋で解毒、と言っていたからおそらくは状態異常に関しては勇者の紋で治癒可能なんだろう。
魔物の言葉、イングリッシウ語だったか?
あれを話していたんでよくはわからないが、部下…なのか?が出てきて話していたが…。」
実際ローズとロードクロサイト以外話していた言葉がわからず、
ただ態度からして当然魔王はえらそうで、
ローズは毒でダウンしていたのでなんともかんとも。
「結果的にプラマイ0ね。しかたがないわ。
魔王じきじきに閉めてしまったならどうしようもないものね。」
理由を知ったネティベルはいずれ戦うことになるだろう元勇者が、
どのくらい回復するだろうかと考える。
今後についてどうすべきか悩んでいると軽く手を合わせる音がし、一斉に視線が集中した。
「ねぇねぇ!なやんでもよくわかんないし、みんなでおまつりあそぼうよ!
ゆきがないのにおまつりってどういうのかきになるー!」
明るく笑うアイアンに頬杖をついていたジミーの腕が落ちる。
だが、確かにできることと言えばそれぐらいしか思いつかない。
あとはどこかにあると言う闘技場で自主トレぐらいしか。
「そういえばアイアンさんは雪国でしたよね。僕のところでお祭りと言うと、
ハロウィンや収穫祭など、昔伝わってきたと言うのを隣の町で行ったりしていました。」
村でのお祭りを思い出し、微笑むチャーリーにベルフェゴもコクコクと頷いた。
「そうねぇ。興味が無かったから知らないわ。」
「師…先生は賢者の一人なのに祭儀に出てなふぎゃん!」
興味ないの、というネティベルにポリッターが首を傾げるが、
振り降ろされた魔道書により床に撃沈する。
「あれ?ネティーは賢者なんです?」
首をかしげるジュリアンにネティベルは舌打ちをする。
どうやら賢者と呼ばれるのは好きではないらしい。
賢者と言えばモクリア国を統治する魔道師達の最高階級だ。
現在は4人いると言うのだが、どうやらその一人らしい。
「確か…モクリアは白魔道・黒魔道を極めたものを賢者に認定し、
中でも優れたものをモクリアの統治する大賢者を配置する…と聞いたが?」
ほとんど国交の無い国で唯一、魔道師や教会の関係者などがやってくるにはくるが、
国の仕組みまではわからないエリーは聞いた情報を頼りにネティベルに確認を取る。
「大賢者…とは言わないわ。優れたと言うか…国に残った賢者が代表会議に出ると言うか。
私は白魔道師として上り詰めて、趣味で黒魔道を習得しただけなんだから。
今は黒魔道師のアルダと薬学のセス、
それに極悪誘拐犯軽犯罪だけでざっと1000件重罪多数の数々の札がついた
魔道具のつくりにかけてはエキスパートなヴォルト。
あぁ、お目付け役にイチイがいたわね。」
かの有名なモクリア国の内部事情を話すネティベルに一斉にクエスチョンマークが飛び交う。
今さらっと代表者になってはいけないような経歴の人がいたような。
「あの人は相変わらず…。イチイ師匠が修正してくれていますから真人間になってくれれば…。」
苦笑いを浮かべるポリッターに今度はキャシーが首をかしげる。
「ポリッター君ってイギナリデッド国出身って言ってたのに何で知ってるの!?!」
モクリア国とイギナリデッド国は遠くは無いが離れているはず。
出会った当初の自己紹介に聞いた出身地と違うことに首をかしげ、
スルメをかじっていたベルフェゴに確認を取った。
当然話をいきなり振られたベルフェゴはスルメをくわえたまま、
眉を寄せるだけで返答はしない。
大体当時があれなだけに聞いてない。
「モクリアとイギナリデッドは魔法陣で繋がっているのよ。
黒魔道師の出身国イギナリデッドから更なる修行をするため魔道学校にやってくるの。
だからお互いの国の情報はよくわかると言うわけ。」
「賢者がお祭りなどの祭事をやるんですけど、先生は全然でないので…
モクリアの祭事は主にアルダ様とセス様が行っていました。
イギナリデッドは由緒正しき方が行っていますよ。」
めんどくさいったらありゃしない、と言うネティベルに弟子は笑う。
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