いろいろな国があるんだぁと考えるジミーに勢い良くアイアンが手を上げた。
「じゃあじゃあ、あたしのくにだけどねぇー。
 まふゆにはたくさんつもったゆきにとびこんだりー。
 えほんよみきかせたいかいがあきにあったりー。
 なつにはまっかなあついおなべたべるたいかいがあるのー。」
 たのしいよー、と笑うアイアンに想像することを拒否する一行。
本当にこの女性の祖国は…バカ!  いつの間にか祖国のお祭り事情の話になっていくが、
それを留められるツッコミがいない現状。
 
「ジュリアンの国はそうですねぇ。ほぼ毎月のように、
 お花見・端午の節句・アジサイ見て、
 七夕で…ご先祖様の霊を迎えて送るお盆のかがり火と海開きに…
 運動会に文化祭に収穫祭に…。あ、お月見忘れちゃ駄目です。
 あとは七五三に紅葉狩りになまはげと…。
 クリスマス迎えたら年の瀬で大掃除してそば食べながら年越しです。
 年が明けたら初詣に行って、七草粥食べてか鏡開きで節分の豆まきにバレンタイン。
 北の方では雪祭りで氷像を作るんです。最後は卒業式にホワイトデーにお雛様。
 ざっとですけど、こんな感じです。」
 
 はーい!というジュリアンが指折り数える行事に感嘆符と疑問符が同時に飛び交う。
一年って12ヶ月だよね?と言うのと、はい!?、という心の言葉が部屋を満たした。
「地方によってはもっと細かくあるんですけど、
 ジュリアンのいたトゥーキョーでよく聞くのはこんな感じです。
 海外のお祭りもどんどん入れちゃうのでまた増えるかもしれないですけど。」
 他の忘れちゃった、と笑うジュリアンに、
ジャポン国はほぼ365日お祭りをやっている国なのかと、
陽気な国なのだなぁとエリー達の中に認識された。
 一方、同国出身であるキャシー、ジミーは間に海があると言うことと、
元々マイス民族と竜球民族が主に住んでいるためその独自の祭事ならあるらしい。
らしいと言うのは、祖父母の代で引っ越してきたため、
あまり島の祭事には出るには出るが名称まで知らないというのだ。
 
 
  「そういえば皆さんの出身地を話すの初めてでしたよね。
 落ち着いたら遊びに行きたいです。」
 山奥の閉鎖的な村で育ったチャーリーは一通り話した後、行ってみたいと笑う。
旅の締めくくりにそれぞれ周って見るのもいいかもしれない。
「皆は今度どうするんだ?私は取り合えず祖国に帰ろうかとは思うが…。」
 呟くように切り出したエリーの言葉にジュリアンはショックを受けたような表情で振り向いた。
 この一行が一緒にいるのは魔王を倒すため。
それが終わったら…それぞれの家に帰るんだとうつむく。
 他の一行も少し考えるようにし、自分達もとりあえず祖国に帰ろうかなと呟いた。
 
「僕は先生についていくので先生が嫌ならモクリアには戻らない…ですか?」
 そう答えたポリッターだがネティベルの顔をとりあえずうかがう。
「一度戻らないとあの爺たちが煩いでしょう。それとイチイの馬鹿が。
 その後のことはその時決めるわ。」
 手を払うような仕草で答えるネティベルにポリッターは元気良く頷いた。
そうだ、とネティベルは同郷のパシを見るがいつの間にか熟睡中……。
孫娘のヘイラーに目を向ければ怪しい薬を前に何かの粉末を混ぜ合わせている。
「ヘイラー、こっちに来る前はモクリアにいたのよね?今どうなっているのかしら?」
「ここに来る前に師匠…あー。ヴォルトがセスの作った新しいポションに、
 トカゲの尻尾を入れて逃げようとしたところをセスに取り押さえられて
 一緒に爆発してた…ぐらいか?」
 ネティベルの問いかけに顔を上げたヘイラーはいつものこと、と肩をすくめて見せた。
頭を抱えるネティベルにポリッターまでもが肩を落とす。