結局情報らしい情報を手に入れられなかった2人だが、
ひとしきり屋台を見て回ると宿へと戻ってきた。
「すっかり祭りのようね。そんなに魔物がいたなんて。」
 お土産のたこ焼きをほおばるネティベルは2人の話を興味深げに聞いている。
隣では丸々一つほおばり、熱さのあまりハフハフ言っている弟子がいるが気にしない。
「そういえば、今の話の最後に出ていたキルと一緒にいたって言う女性…
 シヴァルだったかしら?それたしかウェハースの元奥さんのはずよ。
 前そんな話を聞いたわ。」
 ハフハフ言っている弟子には構わず、最後の一個を食べるネティベルはえぇとと思い出した。
キルと出会った当初、そんな名前を聞いたような気がする。
 そこでチャーリーもそういえば天界に行く際、
それぞれ挨拶を交わしたときに聞こえたようなことを思い出し、手を叩いた。
「ということはお母さんとお祭りに来ていたんですね。あ、そうだ!
 ネティベルさん、どこかで狐って見ませんでしたっけ?銀色の……。
 どこかで見たきがするのですが……。」
 旅の最中、どこかで見たような気はするのだが…。
「銀色の狐ねぇ……確かにどこかで見た気はするわ。
 でもよく思い出せないのよね……。」
「熱かった…。銀色の狐ですか?確かですけど……
 どこかの宿でご飯を食べている時、ローズさんの膝の上に乗っていたと思いますけど。
 あぁ!ない!」
 ようやく一つ目を食べ終えたポリッターは箱が空になっているのに気がつき、
がっくりと肩を落とした。
 ベルフェゴの差し出した綿飴に目を輝かせ、かぶりつく。
「あら。本当に?いつ頃かしら?」
「えぇっと。先生の先生がいる時で……初めての夕食の時だったと思います。」
 全然気がつかなかったわ、と言うネティベルに、
眼鏡についてしまった綿あめと格闘するポリッターは思い出しながら答える。
 仕方なく眼鏡を外すポリッターだが、運よく頭に載せていた別の眼鏡が滑り落ち、
本来あるべき場所へと収まった。
 
 
「幻術かしら?エリー、ジュリアン、お帰りなさい。」
「あぁ。先に戻っていたのか。」
「たっだいまー!」
 首をかしげるネティベルは戸の開く音に声をかける。
帰ってきたのはエリーと上機嫌なジュリアンの声だ。
「換金所でいくつかいらないものを売ってきた。
 3級品ばかり持っていったが…中々いい金になったんで薬の追加だ。」
 実家にあるいらないものをこの際とばかりに売り払う某国の王女。
恐らく部屋の宝石箱は確実に一つ空になっているだろう。
「エリーあれが3級品なんて……
 ぜぇったいアキバハラにもショーケースで厳重にされているものですよ!」
 隣で見ていたであろうジュリアンはガラクタを売ってきた、
と言うようなエリーの言葉に慌てたように手を振った。
 正体を知っているネティベルは、エリーは実は常識人に見えて
金銭感覚などにおいてかなりの非常識人なんじゃないかと思い始める。
っていうか、箱入りならぬ城入り娘だった。
「ネティベル、どうした?考え事でもしているのか。」
「いえ。気にしないで頂戴。」
 まぁ、他の一行メンバーに比べれば常識人だ。
たとえ、使い捨ての投げナイフ一つ一つに小さな装飾がされた立派な短剣であっても…
着ている黒い服が耐魔法性能がついていようとも。
 髪を束ねて隠すための髪留めが純金でできていても……。
 
 やっぱりなんか解せない。
 
 そういうネティベルもモクリアの賢者を務めていただけはあって、
実は家に帰ればエリーには及ばないものの変なものがごろごろと置いてある。
「もう少し休んでいた方がいいんじゃないのか?」
「えぇ。そうみたい。キャシー、貴女の具合はどう?」
 軽く頭を抑えるネティベルにエリーは首をかしげ、ネティベルは頷いた。
隣で眠るキャシーを振り向くネティベルは同じように戦闘不能になってしまったキャシーに声をかける。
「大丈夫!!明日にはもう起き上がっても大丈夫だってヘイラーさんが言ってたの!!」
「そう、よかったわ。せっかくのお祭りなんだし、行って来なさいよ。
 ポリッターもそうくっついていても邪魔だからたまには席をはずして頂戴。」
 元気いっぱいの声に耳が痛くなるが、とりあえず守りきれずに戦闘不能になってしまったが、
元気なようで何より。
 ネティベルの言葉にポリッターは遊びに入っていい許可を与えられ、顔を輝かせた。
先生を置いて…と考えるが邪魔だと言われたら仕方が無い。
ちょっと遊びに行こうと最後の綿飴を口に入れた。