その一撃を素早くかわし、ローズは妹の傍に降り立った。
「そういうことでユーチャリス。父さんと母さんに…まぁどっちでもいいや。」
「お兄ちゃん…どうして…。」
「まぁ人生いろいろってことだよ。それじゃあ…元気でね。あぁ…そうだ。
欲しくないかもしれないけど、魔界に咲いてた花の種…ユーは植物好きだろ?
聞いた話によるとユリに似た花が咲くらしくて…。あれ?薔薇だったかな?まぁいいや。
とにかく花が咲くらしいんだ。まぁ…いらなかったらそこらへんに捨てておいて。」
 目の前で繰り広げられる戦い。それに目を背け、ユーチャリスは兄の腕から渡された種子を見る。
「いわないわ!!こんなもの!ねぇ、なんでなのよお兄ちゃん!」
「そういわないで。…僕でも一応迷ったんだよ。このまま人として暮らすか…
それとも魔界人となるか…。気がかりだったのは…他でもないユーチャリス…お前の事だったよ。
お前は強い子だから…大丈夫だろう…ってそうおもってね。会うべきじゃあなかったんだけど…
どうしても気がかりだったから。元気そうで良かったよ。息子のローズ…僕みたいな馬鹿にならないよう良くみとくんだよ。」
 無理矢理種子を握らせ、ローズはその場を立つ。
ユーチャリスが言葉を発するより先にその姿は掻き消えていた。
いや、武器を失った仲間共々ホースディールに転送させられたのだった。
 
 
「だからってねぇ…。普通ここまで来る?」
 魔剣士を探している人間一行が近くまできていると聞いたローズは城を後にし、
単独で荒野へと足を運んだ。最年長であるはずのシャーマンと妹はいないが、
数ヶ月前に見た元仲間たちにローズは深いため息をついた。
 
「魔剣士チューベローズ!!貴様の命をもらいに来た!!!」
「覚悟しなさい!!!」
ソーズマンとプリーストが叫ぶとファイターとアーチャーも掛け声を上げ、武器を構えた。
「本当にさぁ…。なんで余生を平穏に過ごしてくれないかなぁ…。
幼馴染とかに剣を向ける趣味は無いんだけど…。」
 そういうがもはやかつての仲間達には届かない。
深くため息をつくと軽々と跳躍し、懐から短剣を取り出した。
「せめて…剣は使わないでおくよ。それにしても…本当に良くやるねぇ…。」
 ソーズマンの攻撃を軽く受け流し、アーチャーの矢を叩き落す。
そしてそのまま魔法をかわし、身を低くしてファイターの攻撃をかわす。
「だからさぁ…ワンパターンなんだけど…。」
 
「黙れローズ!!」
「貴方見たいなド変態、もはや知り合いでもなんでもない!」
 ファイターとアーチャーの言葉にローズは大きなため息をつく。
「だからさぁ…なんで僕変態扱いされるかなぁ…。昨日だってフローラに言われたし。
たださ、魔王様のお風呂を覗いただけなのにさ。他にも木を伝って窓を見ようとしたらさ、
ナイフ飛んできたしさ。まったく。やれやれだよね〜。」
 彼の頭の中に犯罪と言う文字がないのか微妙だが、ローズは肩をすくめるしぐさをする。
 
「当たり前でしょ!!!それは覗きと言うれっきとした犯罪行為よ!!!!」
「だってそれは異性にやると…でしょ?同じ同性なんだから別にいいじゃん。」
「だから貴様は変…ド変態なんだ!!!!」
 その間にもローズは繰り出される攻撃をかわして行く。
時折呪文を唱えては足元などをえぐらせ、徐々に徐々にHPを削っていった。