扉の向こうは外と同じ空の下大きな屋敷とそれに続く庭だった。
「すっごーい!月陰江戸村みたい!」
「何だそれは?」
感嘆の声を上げるジュリアンにエリーは首を傾げるが、直ぐに短剣を構える。
何も無い目の前を切りつけると青い髪の魔物が現れた。
「インビジブル!気をつけてください!!姿を消す爬虫類系の魔人です!!」
事前に図鑑を調べ、暗殺に適してそうな魔物の対策をしていたポリッターは
ネティベルを振り返る。
頷くネティベルは魔力をため、両手を突き出した。
「凍てつく風よ 雨を凍らせ 彼のものに降り注げ!下級氷魔法氷雨」
氷の礫作り出すと、宙に留める。
礫が動いた瞬間、エリーの短剣が飛ぶ。
姿を消していた緑髪のインビジブルが姿を現し、その場に倒れた。
「祖父ソーズマン直伝。雷撃剣 雷切鎌鼬」
チャーリーの刀から飛び出た雷撃が氷の礫を避けながらその間の何か…インビジブルを攻撃する。
良く見れば全員が完全に姿を消せているわけではなく、ぼんやりと見えているものもいる。
どうやら最初にエリーが攻撃することができたインビジブルが一番姿を消せていたらしい。
攻撃を受けてなお、生きていたインビジブルはトカゲに姿を変えると草陰に消えていった。
「流星群!」
キャシーの放つ矢が無数に増え、地上に降り注ぐと今度は蛾が襲い掛かる。
「きゃあーーー!!!毛虫!!!」
蛾を狙ったジュリアンの拳が樹に当たり、毛虫が落ちてきた。
慌てて逃げるジュリアンだが、毛虫にしてはやや大きい。
すぐさま姿を変えたのは黒い眼と浅黒い肌の魔物…ダークエルフだった。
蛾もまた姿を変えると毛虫のダークエルフよりも背の高い姿となる。
「子供!?気をつけて!あの子供に生えている羽は毒を持っているわ!!」
小さなダークエルフが背に持った毒々しい羽を開くと、
傍にいるジュリアンにネティベルの声が飛ぶ。
攻撃しようとしたジュリアンは身を翻らせ燐粉を避けると、羽のない大人に拳をめり込ませた。
「その姿 赤く燃え盛る炎の神 灼熱の吐息は大気を焦がし
目に映りし敵を焼き尽くす 灼熱の王を父とする
その炎の精霊をシャイターン」
ジミーの召喚術とアイアンの踊りにより灼熱の化身、イフリートに良く似た精霊が現れ、大きく腕を振るった。
以前、彼が呼び出した上級精霊と全く同じ姿をしたシャイターンの
灼熱の衝撃波に弾き飛ばされるダークエルフ達。
羽を失った子供は顔を上げると大きく口を開き、白い糸を吐き出した。
構えていたボーガンに糸が絡みつき、矢が固定されるキャシーははがそうとするが見た目以上に硬く、中々外れない。
「毛虫さんの糸気持ち悪い!!」
「キャシーさん!上!中級火魔法火炎車」
外そうとするキャシーは、頭上に迫る魔物の刃に気が付かない。
ポリッターの魔法が狙いを定めていた相手に辺り、そのまま横へと打ち落とした。
「今までなんかより断然手ごわい!」
迷路という狭い空間でなく、獣と言う一定の秩序があるだけの集団でもなく、
広い庭と各々が統制の執れた動きをする2軍。
役目を終えたといわんばかりに下がると、次の部隊が押し寄せてくる波状攻撃。
一つ一つの相手ではそれほどの強さではないものの、
特性やチームワークなどを駆使し、最大限まで力を増幅させて襲い掛かっていた。
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