気が付けば昼ごろ入ったはずの空は徐々に茜色をおび、夕暮れを映し出していた。
本当に外の空と同じなのかはわからないが、それでも長時間戦っていることとなる。
「温かい光の風、傷を癒し内なる風をもって力を解放せよ
暗き夜を照らす闇夜の君、澄んだ光をもって内なる闇を打ち砕け
上級補助系光魔法 光風霽月」
全体回復魔法を唱えるチャーリーは丸い尻尾を持つ魔人を斬りつけ、
苦戦しているベルフェゴに向かった。
一応戦力になるようになったとはいえ、まだまだレベルの低いベルフェゴ。
長さの違う2本の刀を使い、巧みに立ち回るが相手に翻弄され守りの一方だ。
背中を守るように立つと、先ほど斬りつけたものと同じ種族の魔人に刀を振り下ろした。
「っ!!釜!?」
はじかれた手が少し痺れ、一瞬で御釜に変化した魔人を良く見る。
狸だ。
「真円なるその完全な形を持って力を写し、跳ね返せ!補助系土魔法土鏡」
ネティベルの物理反射魔法が体を包み、襲い掛かる狸の魔人を弾き飛ばす。
救いは魔法を使う敵が今のところ出てきてないところだ。
「隠れても無駄だ。イクスプロージョン!」
飛び上がるエリーは魔力で繋ぐ無数の短剣を周囲に張り巡らせ、
一斉に四方八方に飛ばした。
仲間に当たらないよう、計算しての攻撃は陰に隠れていた魔物をも貫く。
着地する足元をジュリアンが守り、庭は静かになった。
決定的なダメージを与えられたのは少なかったが、倒れている魔物は次々に光となり消えていく。
「この地上のおいて全ての生命をつくりし父であり母よ
汝の慈悲と聖なる光を持って彼の者を戻したまえ
全ての邪を祓いて最善へと導きたまえ 治癒系聖魔法 全癒根治」
息を整える一行にネティベルは回復を唱えるとMPエイダーを一瓶飲んだ。
チャーリーもMPエイダーを空け、みんな大丈夫かと辺りを見回す。
落ち着いて見渡せばこの庭には何本か樹が生え、ジャポン国の古い建物を思い起こさせる。
ぼんやりと灯りが灯り始める灯篭には3本足の烏の石像が乗っているものがあり、
明かりに照らされ、きらりと瞳が生きているかのように光る。
ベルフェゴが気にしていないのだから、恐らく本当に石像なのだろう。
「カァーカァー」
頭上から聞こえた烏の鳴き声に、屋敷前の樹を見れば
葉の陰に隠れながらも見える大きな烏の群れ。
慌てて石像を振り返るが、やはり石像は石像。
刀を抜くベルフェゴだったが、その目の前を鞭のようなものがさえぎり、空を見上げる。
「こんにちは皆さん。改めまして、2軍一番隊第二小隊隊長セヤと申します。
さぁ、私達烏天狗の猛攻に耐えてファザーン様の下にいけるかしら?」
黒い影はあの腕輪を届けに来た烏天狗。
手に持った蛇腹の剣を鞭のように構え、がんばってねと微笑む彼女の指示に
樹にとまっていた烏が一斉に飛び立った。
全員が背に黒い翼を生やした男の姿になると、手に構えた鉤爪をギラリと光らせ襲い来る。
「やっぱり烏天狗!!風使いだとありましたので皆さん気をつけて!!」
風の使いとも書かれていたと言うポリッターは土魔法が使えるキャシーに目配せした。
「兄ちゃん!鉤爪じゃない…本物の腕だ!!」
応戦するベルフェゴの声にエリーは舌打ちをする。
武器と違い振り下ろす腕の力がそのまま伝わる、いわば猛獣の爪と同じ。
おまけに魔物の腕は異様に硬く並みの剣と同様の強度を持つ。
空いている手には短い柄のないナイフのようなものが握られ、死角から襲い掛かる。
キャシーの岩に包まれた矢がベルフェゴを襲う烏天狗を狙うが、
羽を大きく動かすその風圧に向きを変えられ当たらない。
「なんなの?!全然当たらないよ!」
「あの司令塔を潰せば……。」
躍起になってうつキャシーだが、やはり当たらない。
一応気がそれた隙に抜け出したベルフェゴは、投げられた回転する刃物をぎりぎり避けた。
エリーがセヤに短剣を投げるものの、蛇腹の剣でさえぎられ当たらない。
「ドンポス家奥義…滅砕波!」
ジュリアンの拳は誰にも触れず、ただ前に突き出しただけだ。
しかし、近くにいた烏天狗が広範囲にわたり何かの衝撃を受け、弾き飛ばされていく。
葉の流れる音がセヤのいる樹へと流れ、セヤは小さく笑った。
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